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28-4.動こう②

お待たせ致しましたー







 *・*・*










 記憶が戻った。


 魂が戻ってしまった。


 だが、もう関係ない。


 戻ろうが、戻らまいが関係ない。


 由那(ゆな)は、妹である花蓮(かれん)をここで倒すのみ。


 もう、祖父に可愛がられないように。


 裏の中でもう囲われないように。


 苦しんできた期間を思うと、恨まないはずがない。


 だが、花蓮となった(れん)は、自分を止めようとしている。


 死出(しで)の唄で降り行く、冷気の塊達を防ぐべく、ゆっくりと歌い出した。



「させないよ!!」



 由那は手にしたままの、ケサランパサランになっている甲本(こうもと)を媒介に、癒し手の歌を止めようとした。


 だが、甲本を使っても。何も発動しない。


 まさか、と手の中を見れば。ケサランパサランがどんどん透けていっていたのだ。



「……もう利用させない!」



 意識が戻っても、消えていく甲本は。


 自ら、あの世に戻ると言うことか。


 せっかく、第二の人生と言うものを手に入れたのに。


 まったく、由那はとことんついていなかった。



「あっそう。わざわざ罪を背負ってまで戻るだなんて、どうかしてるよ」

「それを受け入れたんだ。あんたに利用されるのは、もうごめんだ」

「……せっかく生きられるのに?」

「望まない生き方だなんて、やだね」




 そうして、消えていった甲本を見送ると。


 癒し手の能力で、雪を止めた花蓮が狗神にまたがってこちらへとやってきた。



「ふっ!」



 瞬時に、呪符で刀を生成してあちらの霊力で生み出していた刀を受け止める。


 籠の鳥だったはずなのに、万屋と関わったせいで術を覚えたのだろうか。少なくとも、由那達と接触した範囲内ではそれはなかったはず。



「お姉さん、もうやめて!」

「やなこった」



 甲本が消えても、術は半分以上完成していた。


 陸螺(くがら)市から発動した、死出の唄は時期に完成するだろう。


 由那自身も、まだまだ霊力は有り余っている。


 付け焼き刃程度の、馬鹿な妹に負けるわけがない。


 刀を弾いてから、由那はまた歌い出そうとした。


 が、別方向から、拘束の術が由那に巻きついてきた。



「俺らを忘れてちゃ困るぜ!!」



 万屋の新所長。


 奴は男と対峙していたはずが。男はどうしてか由那の後ろで倒れていた。さらにそちらを見れば、あの警視庁の刑事達がいたのだ。龍の化身である守護精に乗り、八咫烏(やたがらす)の化身が得意げになっていた。



「特定位置割り出すのは大変だったが……逮捕させてもらうぞ!!」



 八咫烏の主である刑事が、面白いことを言い出した。


 捕らえる、この由那を。


 おかしくておかしくて、由那は笑いながら晁斗(あさと)の拘束術を引きちぎった。



「なに!?」

「馬鹿だねぇ? 花蓮に関わっている人間達は」



 ここまで追い詰められたのなら、もう解放するしかない。


 瘴気を含む、悪しき霊力を。


 由那は、死出とは違う唄を紡ぎ出した。



「唸れ、唸れ


 我が吐息、死出の旅路


 宿せ、宿せ


 我が身を捧げる


 この由那に、黄泉路の風を!!」



 その唄に聞き覚えがあったのか、花蓮は歌を中断させて由那に振り返った。



「お姉さん!? その唄は!!?」

「…………もう、遅い」



 止めるのが、遅かった。


 もう、止められなかった。


 地獄の門番とまで言われていた、冥府の瘴気。


 屍鬼(しき)をこの身に宿す、禁呪。


 由那の身体が、次第に歪みはじめ、耐え難い激痛を感じた時には。


 由那の意識は、千切れそうになったのだった。


次回は火曜日〜

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