28-3.動こう①
お待たせ致しましたー
*・*・*
ああ、どうすればどうすれば。
と思ったら。
甲本は、意識を取り込まれたはずなのに、存在していた。
何処だ、何処だ。と、辺りを見回しても、相変わらず暗闇だけだった。
だが、あの男女の声は聞こえない。
『あさと』に、『れん』もやっぱりいない。
甲本だけ、ただひとりだけ。
「れ……ん……!!」
ああ、寂しい。
悲しい、悲しい。
あの心優しい少女に、甲本は何もしてやれない。
迷惑をかけているばかりで、何も役に立たない。
好きになった女性にも、死んだ後にアドバイスが出来ただけで。
そこで思い出した。
甲本が、どういう人間だったのかを。
あの黒ずくめだった女に殺されたあと、地獄に堕ちたことも。
自分が、柘植奈央美という女性を欲したために、多大な犠牲を彼女に強いてしまったことも。
「お……れ、は……」
良い人間じゃなかった。
施しを受けて、良い人間では。
なのに、また。柘植に関連のある人間達に、迷惑をかけてしまった。
それに、甲本がかつて依頼をしたあの女。
今は、そこに囚われているのだろう。
何故、ケサランパサランになってしまったのかはわからないが。
『れん』と『あさと』の邪魔をしているのなら、自ら地獄に戻ろうと決意した。
だが、どうすれば、と暗闇の中で腰掛けていたら。
いきなり、目の前が白く染まった。
「主!!」
尖った耳、小さな背丈。
見覚えがあって、当然の存在だった。
甲本の、ただひとつの守護精。
「しょう……わ?」
「思い出されたんですね、主!!」
「……ああ。俺は、利用されているんだな?」
「……ええ。今、漣があの女と対峙されています。二人は……姉妹だそうです」
「……え?」
『れん』とあの女が。
信じられなかったが、守護精の翔羽が嘘をつくはずがない。
それに、彼はどうやってこの空間に入って来られたのだろうか。可能性としては、まだ守護精と宿主との繋がりがあるからかもしれない。
「今……外で、皆正面衝突されています。だから、我々は我々で、死出の唄を止めましょう!」
「……俺たち、で……出来るのか?」
「はい。ただ……僕は消滅して……主は地獄に戻ってしまうでしょう」
「……もともと。この事態が異常だ。やろう」
「はい!」
翔羽はともかく、自分はもういらない存在だ。
それを逆に利用されているのなら、止めるしかない。
甲本は、手の代わりである二本の触覚を彼に差し出して。彼の手に触れたら、暗闇が晴れていったのだった。
次回は水曜日〜




