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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
亜種ケサランパサラン
128/164

26-3.愉しい愉しい

お待たせ致しましたー







 *・*・*










 幸せだ。


 幸せになる。


 そんなことは許さない。


 長である祖父が放っておけと言っても、許さない。


 何故、何故。


 宿敵である、あの万屋の現所長と。


 何故、何故。


 身を寄せた以上に、恋に落ちるなどと。


 そして、付き合うだなんて、女には許せなかった。


 最初は放っておいたが、もう我慢がならない。


 じわじわと、水が染み渡っていくように。


 だんだんと、許せなくなってきた。


 双子の姉妹の記憶は愚か、己が何者であったかも覚えていない、あの妹にはいい加減痛い目に遭ってもらおう。


 ずっとずっと、囲われてて蝶よ花よと育てられていた姫君紛いの存在だった妹。


 ずっと辛酸を舐めてた姉の自分が、どれだけ苦労してきたのか。


 どれほど、この手でヒトや妖などを屠ってきたのか。


 きっと、知らないだろう。囲われていた時も、一度とて知らせていなかったから。



「……く、ふふ。くくく……あっはっは!?」



 男が得た、甲本(こうもと)の魂が憑依してしまったケサランパサランも手に入れた。


 この市を、蝕むいい機会だ。


 あの妹の、苦痛の表情を見るのも愉しいかもしれない。


 苦労を知らない、あの双子の妹のことだから。



「……魂を引っ張り出すにもちょうどいい。……甲本くん? 君には(にえ)になってもらうよ?」



 握り潰せる綿状の妖となった、甲本泰彦(やすひこ)


 気を失って、女の手の中にいたのだった。



「……具体的にどうするつもりだ?」



 後ろにいた男が、軽くため息を吐きながら女に問いかけてきた。



「ふふん? 素敵に楽しく……この甲本くんを活躍させてあげるのさ?」



 我ながら、怖い声音で言ったかもしれないが、それでいい。


 男も、呆れながらも『わかった』と頷いてくれた。


 なら、今からは。


 少し時期外れではあるが、この市を吹雪かせよう。


 そして、埋もれさせよう。


 たとえ、妹を殺すことになったとしても。


 それはそれで一興だ。


 祖父も、放っておけと言うくらいだから、今更固執する意味がないのだもの。

次回は金曜日〜

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