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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
亜種ケサランパサラン
126/164

26-1.思い出せたが

お待たせ致しましたー







 *・*・*










 ああ、なんとなく。


 なんとなく、何かを思い出してきた。


 一人の女の人を得るのに。


 たくさんの人に迷惑をかけた。


 誰も幸せになれず。


 自分を不幸に落としただけの結果。


 そして、自分は殺された。


 なのに、今。


 ケサランパサランという妖怪になって、生きているのだ。


 何故、何故。


 手に入れようとした女の人に、幸せになって欲しいと地獄からの配慮で一時的に蘇っただけなのに。


 そこから、罪を償うために地獄に戻らされるはずが。


 どういうわけか、生きている。


 そして、助けられたのだ。


『あさと』と『れん』に。


 食事も与えられて、眠くなって寝てしまったのだが。


 自分はかつて何だったのか、明確には思い出せていなかったが。


 人間の男だったことはわかった。これをれんに伝えようと起きたら。


 みんながみんな、複雑そうな表情で自分を見ていた。


 それと、自分の側には見覚えのある小さな存在がいたのだ。



「……だ、れ?」

「我だ、主」

「あ、るじ……?」

「記憶がないのか? あなたは我の主、甲本(こうもと)泰彦(やすひこ)だ」

「こ……もと?」



 自分が何であるかを知っている存在。


 そして、自分が人間だった時の名前を知っていた。


 その名を聞くと、内側が熱くなってきて身体が言うことを効かなくなってきた。



「主!?」

「甲本!?」



 なんだ、なんだ。


 身体が熱くて熱くて、燃え上がりそうだった。


 ジタバタ動いていると、触覚が触れて音がするのがうるさく聞こえるくらい。


 ああ、どうしたものかと悶えていたら。


 澄んだ歌声が聞こえてきた。



「……れ、ん……?」



 少女が歌っていた。


 まるで、子守唄のように優しく、労るように。


 彼女を見ると、少し泣きそうな表情でいたが。動きが止まった自分を優しく撫でてくれたのだ。熱いはずなのに全然平気らしい。



「……大丈夫だよ、甲本さん」

「……れん」



 優しく撫でてもらうと、不思議と落ち着くことが出来た。


 熱さも引き、まだ隣にいる小さな存在もきちんと見れた。



「……思い出せましたか? 主」

「…………あんまり。僕は、こーもとなの?」

「ええ、間違いなく」




 どんな人間だったかははっきりとは思い出せないでいるが。


 まずは、ここにいる人達に謝ろうと触覚を傾けた。



「…………ごめんなさい。僕は、たぶん。人間だった時に、あなた達に迷惑をかけた」

「……思い出したのか?」



 あさとが聞いてくると、きちんと頷く。



「全部じゃないけど。女の人を、手に入れようとしてた」

「……そのお姉さんは、ちゃんと今幸せだって」

「? れん、知ってるの?」

「うん。菜幸(なゆき)さんって人から教えてもらったよ?」

「……そう」



 であれば、自分がすべきことは。



「? 主?」

「僕、死んでたんなら、いたところに戻らないと」

「……そうですね」

「え?」

「あの世に、いくのか?」

「うん」



 その方がいい。


 それでいいんだ、と言おうとしたら。


 いきなり目の前が真っ暗になった。



「甲本!?」

「甲本さん!?」



 あさととれんの声が遠くに聞こえる。


 泰彦は、自分の身に何が起きたかわからなかったのだった。


次回は土曜日〜

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