25-8.緩く動く
お待たせ致しましたー
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最悪だ。
甲本の魂がケサランパサランに憑依しまっていた。
憑依したことで、甲本だった時の記憶がほとんどないらしいが。
あの漣と名付けられた女の歌の力で。
魂の片鱗でもある『守護精』が蘇ってしまった。
今ここで、単身乗り込んで、あのケサランパサラン擬きごと連れて帰るのは簡単だ。
だが、その後どうすればいい。
どうしたら、ケサランパサランと甲本を切り離せるのか。
守護精まで蘇り、甲本だと万屋一行にバレてしまった。
双子の姉の方は、面倒だと言い切るだろうが、男はそう言うわけにはいかない。
自他ともに認めるくらい、生真面目なのだ。
「……術で目眩し……いや、それは危険だ。あの妹が近くにいては、俺の術など相殺してしまうだろう」
元々身内であった関係だったが、姉とは違い妹は破壊ではなく、修復と救済を可能とする能力の持ち主だった。
男と話し合う機会があるどころか、祖父である長によって幽閉されていたのだ。
あの事件が起きるまでは。
「……引くしかない。前所長がいるのであれば、魂の消滅はないだろうが」
殺しを厭わない『裏』の存在であれ、消滅を好むわけではない。
あの姉は違う思考の持ち主でがあるが、あれは裏に塗り固められた結果だ。妹である漣も似たはずなのに、双子でも考え方が違ったのか。
幽閉から、逃亡。
そして、魂を切り離して、守護精を逃がした。
それが今の漣なのだが、癒し手の能力は健在だった。それは喜ばしいことだが、何故宿敵である万屋に匿われたのだろう。
そして、何故。現所長と好意を交わしてしまったのだろうか。このことを姉は知っても、長に知らせても『そうか』とだけしか返答がなかった。
身内から切り離すつもりなのだろうか。あれだけ、囲って育ててきた孫娘を。
「……とにかく。今はまだ知らせるのはやめておこう」
男のミスだからだ。
帰還しようと、術を発動させようとしたら。誰かに肩を掴まれた。
「面白いじゃん?」
「……いたのか」
注意散漫過ぎた。
男と同じように、黒ずくめのマントを羽織っているが。フードから覗く口元は、面白いものを見つけたかのようににんまりと緩んでいた。
「幸せいっぱいいっぱいのあの子の生活。……壊したくなるよ」
そして、やはり物騒な考えを持っていたのだった。
ここまで来ると、長がたとえ禁じても実行するだろう。仕方なく、男は息を吐いた。
「ふふふ。ふふ? ずっと鳥籠にいた鳥が羽ばたき続けるだなんて、僕は許さないよ?」
その後に、かすかにつぶやいたのは、あの妹の本当の名前だった。
次回は水曜日〜




