25-6.普通じゃない自分
お待たせ致しましたー
*・*・*
『れん』と『あさと』に連れてこられたところ。
何処此処。
自分がいた『こうえん』よりは狭い場所。
だけど、とてもいい匂いがする。
色んな匂いがする。
香ばしい。
甘い。
優しい草の匂い。
いい匂い達に囲まれて、お腹が空いてきた。
今自分は人間ではなく、だけど普通の『ケサランパサラン』とか『袈裟羅・婆娑羅』などと呼ばれている妖怪とも違うらしい。
普通の個体よりも大きく、なおかつ特殊な触覚が二本。
れんに抱きかかえられながらやってきた此処は、『うぃんたーじゅ』と呼ばれている中でも。『よろずや』と言うところらしい。
れんが机に下ろすと、やはり手足がない今の身体ではバランスがうまくとれない。
ころんと転がると、慌ててれんが起こしてくれたが。
「…………おなか、すいてきた」
正直に言うと、れんは目を丸くして。あさとは髪をかいた。
親玉と呼んでいる、自分と同じらしいケサランパサランがあさとの頭から降りてこっちにきた。
『普通、あり得ぬ』
「……え?」
『我らは白粉などを好むが、腹が減るのとは違う。ヒトが空気を必要とするように、我らは白粉を好むのみ。腹が減るなどとは思わん』
「…………ぼく、人間だった……から」
『それが真で有れば、道理はある。すまないが、此奴に菓子でもいい。分け与えてくれぬか?』
「なんでもいいのか?」
「僕、克己さんに聞いてきます!」
「頼んだ」
れんが何か持ってきてくれるらしい。
少し、楽しみだった。
それと喉の渇きのようなものも覚えたので、あさとにお願いして飲み物ももらった。
口を開けるような部分から、すとろーという道具でちゅーちゅー吸いながらおれんじじゅーすと言うのを飲んだ。
甘酸っぱくて美味しかった。
「お待たせ致しましたー!」
れんが戻ってきた。
少し、皺が深い老人とも一緒に。
誰だろう、と思ったら。その老人が自分の前にしゃがんで、自分の毛並みを軽く撫でてくれた。その手つきはれんのように優しかった。
「……君が。人間だったかもしれない、ケサランパサラン?」
そう聞いてきたので、自分は上下に身体を震わせた。
「うん。……ぼく、人間だったのに。起きたら……こうなってた」
「ふむ。名前はあるかな?」
「覚えて……ない。あったのは、わかるんだけど」
「そうか。……とりあえず、お腹が空いているんだね? このチョコケーキをどうぞ?」
「ちょ……こ?」
少し黒っぽい、四角い塊。
食べ物だと思えないが、老人がどうぞというのなら、美味しいものかもしれない。
口の毛を上げて、ぱくっと塊の一部を食べてみる。
少し苦いが。甘くて甘くて、とても幸せな気持ちになれて。
そこからは、汚れるのも厭わず、無心になって食べていったのだった。
「美味しい?」
れんが途中で聞いてくると、自分は身体を震わせた。
「おいしい! 甘い、甘いよ!」
「ゆっくり味わって食べてね?」
うんうん、と身体を震わせてけえきと言う菓子を食べ終えたら。
何故か力が抜けて、眠くなってしまい。ころんと転がりながら机の上で横になったのだった。幸せで、とてもいい気分だったから。
次回は木曜日〜




