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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
新たなカップル
115/164

24-4.同士から恋人へ

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 きっかけはなんだったか。


 清司郎(せいしろう)は理由を探すも、そこは曖昧になっていた。


 初対面は、単なる警護対象でしかなかった。だが、その任期も終わり、ただの警視庁の人間と一般会社員の間柄に戻ってから。


 そこから、また出会うとは思わなかった。


 あの日、あのデパートに行ってバレンタインプレゼントを買いに行こうとしなければ、柘植(つげ)奈央美(なおみ)と再会することはなかっただろう。


 そして、同じ女性を尊敬し合い、意気投合することもなかったが。その女性である古厩(ふるまや)菜幸(なゆき)が、彼女が長年想い続けていた安斎(あんざい)(あかり)と交際すると知った今日。


 清司郎は、自分が思っていた以上に。あっさりとその事実を受け入れていた。


 本当に、予想外過ぎるくらいに。


 だから、ケサランパサランのあの事件で、柘植が危機に陥っていると知らされた時の方が、正直言って焦ったのだ。


 まだ数回しか出会っていないが、同士のような不思議な関係になれた仲間に危機が訪れている。


 それが、清司郎が菜幸とは違う、水仙の花のような笑顔の女性が。と、篤嗣(あつし)に連絡を受けた時は自身の守護精を使って飛んだくらいだ。


 それくらい、もう清司郎の気持ちは菜幸ではなく柘植に傾いていたのだろう。


 バレンタインの今日。あれから数日も経っていないのに、少しぽやんとするぐらい考えてはいたのだ。自分の優先順位が変わっているのだと。



「……行くか」



 篤嗣に言われて定時で上がり、あの時と同じデパートで。あの時購入したのとは別のものを購入してから、柘植の会社にすぐに携帯でアポを取り。


 柘植はどうやら普通に仕事をしているらしく、応対も出来るようになっているそうだ。守護精が進化したお陰か、体力などの消耗も落ち着いているのかもしれない。


 とりあえず、私用と言うのは伏せて彼女の会社に向かい。


 受付に告げたら、すぐに柘植が出てきてくれたのだ。



御子柴(みこしば)さん! こんばんは!」



 今日はバレンタインのせいか、薄ピンクのニットと合わせたフォーマルスタイルでいた。それが彼女らしくて可愛らしく思い、清司郎は思わず頬が緩んだ気がした。



「こんばんは、柘植さん。今日は署の用件ではなく、個人的に会いに来たんです」

「……え?」

「お仕事はあとどれくらいで終わりますか?」

「え……っと、あと三十分くらいで」

「では、近くのスターゲーツで待っています」

「あ、は……い?」



 とりあえず、約束は取り付けられたのでコーヒーチェーン店のスターゲーツに足を向けてエスプレッソを頼んで待ち。


 そこから二十分もしないうちに、柘植が急ぎ足でやってきたのだ。



「柘植さん!」

「ご……めんなさい。お待たせして」

「それは構いませんよ。俺の個人的なお誘いですから」

「え、お誘い?」

「とりあえず、何か飲みましょう? コーヒーで大丈夫ですか?」

「あ、お金」

「構いませんよ」



 清司郎とは違う、アメリカンのホットを頼んでから座っている彼女の前に置き。


 軽く飲んでから移動しようと、柘植に言った。



「ここでお話では?」

「大勢の前では、少々言い難いんです」

「! また何か??」

「ああ。違います。今回は本当に俺の一存ですから」

「??」



 ちっとも内容がわかっていません、と言う彼女を連れて人混みの少ない公園に移動して。


 防寒対策として、清司郎は守護精の鏡花(きょうか)を顕現させたのだった。



「鏡花。防寒対策の結界をお願いします」

『承知。主よ』



 ウィンタージュの悠耶(ゆうや)とはまた違う、金色の龍。黄竜(おうりゅう)とも呼ばれるかなり高位の龍の化身でもある。


 鏡花は少し透明となり、清司郎達を囲むようにして結界を張ったのだった。



「わ、あったかい」



 珠羅の結界がすぐに利いてきたので、真冬でも室内並みに温かになった。



「率直に言わせてください」



 清司郎は準備が整ったら、柘植にすぐに告げることにした。


 柘植は緊張してきたのか、またすぐに固まったような表情になったが。清司郎にはその表情すら愛おしいと感じた。


 なら、今抱いている気持ちは本物だと。



「俺は……あなたに好意を抱いています。受け取ってくれませんか?」

「…………え?」



 そして、清司郎が告白したのが信じられないとでも思っている表情すら、可愛いと思うのは最早重症か。



「もう一度、言いましょうか?」

「え、いえ!? ゆ、夢……じゃないかな……って」

「夢ではありませんよ?」



 ああ、やはり。


 少しだけ確信はあったのだが、それが確定となった今。清司郎はもう躊躇う必要はなかった。


 柘植を抱き寄せ、自分の胸に顔を当てさせて。今清司郎がどれだけ鼓動が速いか教えたのだ。



「…………あの。速いですね?」

「俺だって、緊張してましたよ?」

「ふふ。お揃いです」

「……奈央美さん、と呼んでも?」

「清司郎さん、でいいですか?」

「はい」



 とりあえず、気の済むまで抱き合ってから。二人で、公園のベンチに座って。冷めたそれそれのコーヒーと一緒に清司郎が買ってきたバレンタインプレゼントのチョコを食べるのだった。

次回は月曜日〜

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