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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
新たなカップル
113/164

24-2.ファーストキスのやり直し

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 定時で菜幸(なゆき)(あかり)は退勤して。


 燈の車で、馴染みのスーパーに行って食材を買い込み。万屋の関係で数回しか行けていない、燈の自宅に直行したのだった。


 一人暮らしなせいか、未だ実家住まいの菜幸の家とは違って狭い。友達になった柘植(つげ)奈央美(なおみ)が母親と暮らしているマンションよりも、ちょっと狭いくらいだった。


 だが、中に入るのは初めてなので、菜幸は少し緊張してしまう。だって、ただの後輩じゃなくて『恋人』になれたのだから。



「……そんな、固くならないで?」



 未だ玄関でカチカチになっていた菜幸に、燈は軽く頭を撫でてくれた。


 子供扱いはされていないだろうが、彼は気を許した相手にはだいたいするのだ。男女問わず、年齢問わず。


 晁斗(あさと)にも未だにするくらいだから。



「緊張……しますよ」

「僕の家だから」

「っす。……あ」

「あ、言ったね?」



 まだ矯正を始めたばかりだから、うっかり口にしてしまったが。燈はなんと、菜幸の頭に軽くキスしてきたのだった。



「え、え!?」

「ペナルティー。何回も口にしたら、場所変えるよ?」

「ぺ、ペナルティー……ですか!?」

「そうそう。……口にしていいの?」

「〜〜〜〜!?」



 それはまだ勘弁願いたい。


 彼氏だなんて、まだ彼を除けば一度しかいなかったし。その彼氏ともキスなんてしなかったのだ。単純に付き合い出しただけだから、キスが嫌だっただけで。


 けれど、口じゃないキスでも。燈のは嫌だと思わなかった。それくらい、ずっと想っていたし本気だったから。


 なので、首を横に振れば、燈には小さく笑われるだけだった。



「はは。僕も歯止めが効かなくなるだろうから……これからは、ね?」

「〜〜……ぅう」



 とりあえず中に入ろうと言われたので、靴を脱ぎ。


 通された部屋は、大きなキッチンが特徴的なところだった。



「ここでは、ほとんど料理研究ばっかりしててね? あとは適当に寝るだけなんだ」



 だから、食器とか家具は適当だと言っていたが。蛍蘭(けいらん)と生活しているからか、きちんと戸棚にはひととおり揃っていた。


 買った食材を冷蔵庫や貯蔵庫に入れてから、こたつの電源を入れた燈にこっちに座ってと隣を指したのだ。


 菜幸はちょこんと座ると、彼から肩に腕を回されてしっかりと抱き込まれたのだった。


 あれだけ菜幸の気持ちを焦らしてきたのに、受け入れたら積極的だ。そのギャップに、菜幸は心が震えてどんどん体がぽかぽかとしてきた。



「あ……の、先輩」

「ん?」



 今なら言える、と菜幸が呼べば。彼はまた蕩けるような笑みを浮かべてくれた。



「……ふ、二人の時は……」

「うん?」

「あ、燈……さんって呼んでも。いいですか?」

「ふふ、もちろん。じゃあ、僕は呼び捨てでいい?」

「! はい!」



 嬉しい、と思わず笑みになってしまったら。


 一瞬のことだったが。燈の顔が近づいてきて、軽くリップ音が聞こえた。


 唇の感触が、少し温かくて。


 まさか、と顔を上げたら。彼はその笑みのままだった。



「……奪っちゃった」

「……〜〜!?」



 いきなり、だったが。


 菜幸の、ファーストキスを奪われてしまったのだ。


 嫌、ではないが。少し悔しかった。もう少し、ちゃんと味わいたかったから。



「嫌だった?」

「……じゃなくて。もっとちゃんとして欲しいです」

「え?」

「私の……ファーストキス。やり直ししてください」

「……ちゃんとしたら、歯止めが効かないよ?」

「……ご飯作るのは、手伝います」

「残念。じゃ、キスだけね?」



 それから一時間くらい。


 二人は、それはそれは甘い時間を過ごすことになったのだった。

次回は火曜日ー

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