24-2.ファーストキスのやり直し
お待たせ致しましたー
*・*・*
定時で菜幸と燈は退勤して。
燈の車で、馴染みのスーパーに行って食材を買い込み。万屋の関係で数回しか行けていない、燈の自宅に直行したのだった。
一人暮らしなせいか、未だ実家住まいの菜幸の家とは違って狭い。友達になった柘植奈央美が母親と暮らしているマンションよりも、ちょっと狭いくらいだった。
だが、中に入るのは初めてなので、菜幸は少し緊張してしまう。だって、ただの後輩じゃなくて『恋人』になれたのだから。
「……そんな、固くならないで?」
未だ玄関でカチカチになっていた菜幸に、燈は軽く頭を撫でてくれた。
子供扱いはされていないだろうが、彼は気を許した相手にはだいたいするのだ。男女問わず、年齢問わず。
晁斗にも未だにするくらいだから。
「緊張……しますよ」
「僕の家だから」
「っす。……あ」
「あ、言ったね?」
まだ矯正を始めたばかりだから、うっかり口にしてしまったが。燈はなんと、菜幸の頭に軽くキスしてきたのだった。
「え、え!?」
「ペナルティー。何回も口にしたら、場所変えるよ?」
「ぺ、ペナルティー……ですか!?」
「そうそう。……口にしていいの?」
「〜〜〜〜!?」
それはまだ勘弁願いたい。
彼氏だなんて、まだ彼を除けば一度しかいなかったし。その彼氏ともキスなんてしなかったのだ。単純に付き合い出しただけだから、キスが嫌だっただけで。
けれど、口じゃないキスでも。燈のは嫌だと思わなかった。それくらい、ずっと想っていたし本気だったから。
なので、首を横に振れば、燈には小さく笑われるだけだった。
「はは。僕も歯止めが効かなくなるだろうから……これからは、ね?」
「〜〜……ぅう」
とりあえず中に入ろうと言われたので、靴を脱ぎ。
通された部屋は、大きなキッチンが特徴的なところだった。
「ここでは、ほとんど料理研究ばっかりしててね? あとは適当に寝るだけなんだ」
だから、食器とか家具は適当だと言っていたが。蛍蘭と生活しているからか、きちんと戸棚にはひととおり揃っていた。
買った食材を冷蔵庫や貯蔵庫に入れてから、こたつの電源を入れた燈にこっちに座ってと隣を指したのだ。
菜幸はちょこんと座ると、彼から肩に腕を回されてしっかりと抱き込まれたのだった。
あれだけ菜幸の気持ちを焦らしてきたのに、受け入れたら積極的だ。そのギャップに、菜幸は心が震えてどんどん体がぽかぽかとしてきた。
「あ……の、先輩」
「ん?」
今なら言える、と菜幸が呼べば。彼はまた蕩けるような笑みを浮かべてくれた。
「……ふ、二人の時は……」
「うん?」
「あ、燈……さんって呼んでも。いいですか?」
「ふふ、もちろん。じゃあ、僕は呼び捨てでいい?」
「! はい!」
嬉しい、と思わず笑みになってしまったら。
一瞬のことだったが。燈の顔が近づいてきて、軽くリップ音が聞こえた。
唇の感触が、少し温かくて。
まさか、と顔を上げたら。彼はその笑みのままだった。
「……奪っちゃった」
「……〜〜!?」
いきなり、だったが。
菜幸の、ファーストキスを奪われてしまったのだ。
嫌、ではないが。少し悔しかった。もう少し、ちゃんと味わいたかったから。
「嫌だった?」
「……じゃなくて。もっとちゃんとして欲しいです」
「え?」
「私の……ファーストキス。やり直ししてください」
「……ちゃんとしたら、歯止めが効かないよ?」
「……ご飯作るのは、手伝います」
「残念。じゃ、キスだけね?」
それから一時間くらい。
二人は、それはそれは甘い時間を過ごすことになったのだった。
次回は火曜日ー




