24-1.見栄
新章スタート!
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とうとう。
とうとう、とうとう、とうとう。
古厩菜幸二十三歳。
ずっと想いを寄せていた年上で渋くてカッコいい大先輩と、今日めでたく結ばれたのだ。
しかも、バレンタインの日に。
「……さて。菜幸ちゃん」
その相手である、安斎燈。さっきまで吸っていたタバコは消したのか、今は独特のあの匂いがするだけ。
まさか、いきなりキスされるのではと思ったらのだが。ずっとされていた抱擁を解いただけだった。
「……その箱。僕がもらっていいものかな?」
「あ」
勢いの告白と、彼からの告白に嬉しくて驚いて忘れていた。
なので、潰れていないか確認してから、燈に差し出したのだ。
「手作り?」
「……はい。咲乃先輩と漣ちゃんと一緒に」
「ありがとう。中身は何かな?」
「パウンドケーキです。チョコの」
「…………じゃあ、菜幸ちゃん。今日の夜って空いてる?」
「は、はい?」
え、まさか。と、顔を上げれば。燈は菜幸が蕩けてしまうような、極上の笑みを浮かべていた。
「もし良ければ、このプレゼントのお返しに僕が料理するよ。うちに来ない?」
「い、いいんすか!?」
業務連絡などにも、私用でもほとんど出向いたことがない。燈の家。
親元を離れて一人暮らしだと言うことは知っているが、普段は守護精の蛍蘭と生活しているらしい。そこにいきなりとは言え、恋人になった菜幸をディナーに招待。
テンション爆上がりだと、思わずその場でぴょんぴょんしてしまった。
「はは。喜んでもらえたなら何よりだよ? 買い物も一緒に行こうか?」
「うっす!」
「それと、もう一つお願いなんだけど……」
「?」
燈が顔を寄せてきて、にっこりと微笑んだのだった。三十代の色香に、菜幸は今更ながらくらくらしそうになる。
「その言葉遣い……ちょっとずつでいいけど。直してくれる? もう見栄張らなくていいからさ?」
「……バレてました?」
「もちろん」
癖になってしまっていたが、燈に見向きもされていなかったと思ったから。彼と出会ってすぐに、目上の人とかには男言葉のような敬語を使っていた。
燈の言うように、舐められないためにと、虚勢を張っていたのだ。だが、少しずつなら改善出来るだろう。
晁斗達とのやり取りもずっとそうだったが、直せなくはない。
菜幸が頷けば、なんと燈はおでこに軽くキスしてくれたのだった。
「じゃ、時間もあんまりないし。仕事に戻ろうか?」
「う……はい」
「頑張って頑張って」
そうして二人で喫茶側に戻ったら。
バックヤードで、咲乃と悠耶。あと、克己から小さなクラッカーを鳴らされて、お祝いされたのだった。
「おめでとう!」
「おめでとう、燈先輩!」
「菜幸ちゃんもおめでとう!」
もう決定事項だったのか、菜幸も燈も顔を合わせて苦笑いしかできなかった。
「ね、ね? 菜幸ちゃん達も今日デートするの!?」
「こらこら、咲乃? いきなり聞く内容じゃないよ?」
「だって、おじいちゃん!」
「とりあえず……今日は定時で上がりますね。オーナー」
「ふふ、構わないよ? たまにはゆっくりしなさい」
そしてその後。クラッカーは鳴らされなかったが、バイトやパートのスタッフにも同様にお祝いされて。
菜幸は晴れて、燈と公認のカップルとなったわけである。
次回は土曜日〜




