表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインデートの続き
110/164

23-6.ミスボ制覇

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 ドーナツ、と言うお菓子は知ってはいる。


 けれど、こんなにも種類があるのが、(れん)にとっては宝石箱のように見えたのだ。



「うわぁ……!」



 カラフル。すべてがカラフルだった。


 穴が空いたドーナツ。丸いもの、小粒で色々かかったものが箱に入ったり、パイだったり。どれもこれもが、漣の知らないドーナツばかりだった。



【なんとも、芳しい匂いばかりだ】

「んふふ〜? はいはーい! 二人ともトングとトレー持って持って?」

【……盆と。なんだこのはさみみたいなのは?】

「んふふ! 璐羽くん? これで好きなドーナツをトレー……お盆に載せていいのよ? その後にお会計してもらうから」

【なんと! 己の手で】

「とりあえず、載っけて載っけて!」

「あ、ありがとうございます。璐羽……? 食べ切れる量でも加減はしてよ?」

【……応】



 下手すると、この並びにあるドーナツ達を完食してしまうからだ。いくら、美乃梨(みのり)の奢りだからとは言え、節度は守らなくてはいけない。ついさっきまで、寿司もかなりの量を食べていたのに、それでも無尽蔵。


 それはやはり、狗神だと言う存在のせいかもしれないが。もちろん、人間に合わせた適量を食べることもあるが、遠慮がないと本当に遠慮しないのだ。



「あ、ねーねー、漣ちゃん? チョコ好き?」

「あ、はい。好きです」



 美乃梨に肩を叩かれたので、そちらを向けばファンシーで可愛らしいキャラクターを意識したドーナツがあった。



「全種類網羅するにしても、一人じゃ食べ切れないからぁ。半分こにしない?」

「わかりました!」

【我も……】

「あ、うん。どうしてもの場合はね?」



 そして、後から空呀(くうが)もやってきたので全員で結局全種類を網羅したのに。結構な金額を打ち出されたはずなのに。


 美乃梨は黒い綺麗なカードで、ささっと支払いを済ませたのだった。



「じゃ、戻ろ戻ろ」

「え……っと、美乃梨さん。こんな量奢っていただくのは」

「いいよいいよ。祈里(いのり)は甘党だし、守護精は本来食事は必要なくても、制限が特にないから」

「え、いやでも」

「まあまあ! ひと口ずつもらえばいいからいいから」

「うう……」



 と、協力して運んで席に戻ったら、祈里は苦笑いして晁斗(あさと)はギョッと目を丸くした。



「結局、ぜ〜んぶ買うたんか?」

「ん! 食べ切れなかったら、空呀くん達に頑張ってもらうー」

「マジですまねえ……」

「いいのいいの! キャラコラボ全制覇したいって言ったのあたしだし?」



 支払いもポケットマネーにそんなに響いていないと言われたので、漣にはよくわからなかったが。


 とりあえず、周囲の注目も集めているドーナツの山を片付けるべく、漣は気になってたウサギ型のドーナツをひと口。


 ほわほわの生地がとても甘く、ピンク色だがチョコはチョコの味で。生地の間にはさらにホイップクリームと多分いちごのソース。


 これが、カフェオレとよく合ったのだった。



「美味しいです!」

「いいよいいよ! 漣ちゃんどんどん食べちゃって!!」



 それからは夢中だった。


 お寿司でいっぱいだった胃袋のはずが、甘いものは別腹だと以前菜幸(なゆき)が言っていたように。いくらでも食べれてしまう。


 バレンタインプレゼントを作った時もそこまで味見しなかったのに、この異常な食欲はなんだろうか。


 ハンバーガー同様に、漣が記憶を失う以前に食べ慣れていたものなのか。


 五個目を食べようとした途端、晁斗の指が顔を掠めた。



「誰もとんねーから、もちっと落ち着いて食え」

「あ……すみません」

「いや、面白いくらいに食うから。見てて飽きねーけどよ?」



 と言いながら、漣の食べカスを躊躇うことなく口に運んで、漣が声を上げる前に別の席の人達がバタバタと倒れる音がした。



「……え?」



 顔を真っ赤にしてテーブルに伏していく女性ばかり。


 何が起こったのかわからないでいると、何故か美乃梨が大きく笑い出した。



(ゆう)兄だったら、もっと被害大だっただろうけどぉおおお!? 晁兄もやるじゃん!!?」

「美乃梨……笑い過ぎや」

「だってさぁ?」



 とりあえず、別に事件が起きたわけではないようなのでほっとは出来たが。



「……漣限定だ」



 と、当事者である晁斗は少し頬を赤らめてからそう言い張り。


 漣は、ドーナツを置いてから彼に抱きついたのだった。


 それが更なる歓声を上げられるとは思わず。漣は後で後悔したのだが。

次回は日曜日〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ