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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
バレンタインデートの続き
105/164

23-1.漣のスマートフォン

お待たせ致しましたー







 *・*・*








 良い知らせが来た。


 晁斗(あさと)(れん)は、ショッピングセンター内のカフェのひとつでコーヒーブレイクをしていた。


 逆ナンされてた一件で、漣はカンカンに怒ったのだが。映画を観ている最中に軽食は食べても腹は足りなかったようで。


 休憩も兼ねて、今はカフェでひと息ついているのだ。注文した品を待っている間に、たまたま悠耶(ゆうや)からLIMEの通知があり。


 (あかり)菜幸(なゆき)が休憩時間に話し合ったらしく、無事に結ばれたそうだ。


 ほっと出来たので、カフェオレで温まってた漣にも教えてやった。



「良かったです! 僕、嬉しいです!」

「だな。ま、菜幸も三年耐えたし。兄貴も色々あって五年……妥当だろ」

「耐えてた?」

「あんま大声出すなよ?」

「はい」



 晁斗は燈が昔の、裏との対決の際に、友人であり同期だった女性を油断してた時に喪ってしまい。


 好意に近い感情を寄せてたため、余計にショックが大きかった。以来、己が幸せになることを避けていたのだ。けれど、先日も問い詰めたように、菜幸には一定以上の好意をいつのまにか抱いていたので。


 無事に今日。その障害を乗り越えたのだろう。晁斗としても信頼出来る兄弟子の幸せを喜ばないはずがない。菜幸がその真実を知っていたのは、晁斗も彼女から相談を受けていたからだ。



「つーわけで。俺も肩の荷が降りた気分だ」

「裏……。昨日のあの女の人、ですよね?」

「ああ。あいつのしたいことはよくわかんねーが」



 今日は何もないであって欲しい。


 事件を解決仕立てでもあるが、漣との初デートをじっくり楽しみたい理由もある。


 今日くらい、万屋の所長ではなくただの人間でいたかったから。



「僕、今日は晁斗さんと一緒にいたいです」

「だろ?」

「はい」



 漣も同じ考えなのが嬉しかった。


 少し苦笑いした彼女を見て、晁斗はこの建物に来たもうひとつの目的を進めることにした。



「昼飯にはまだ腹が膨れてるし、今日はお前にもう一個プレゼントしたいもんがあるんだ」

「? なんですか??」

「携帯」

「……僕にですか?」

「お前の記憶がまだ戻らないにしろ。万が一の連絡手段はあった方がいいからな? つか、悪い。使えんのに最近まで忘れてたのもあんだ」

「い、いえ! あんなにも便利なもの、僕が持つだなんて」

「いーんだって。万屋の一員として、お前は充分な戦力だ。経費で落とすし、気にすんな」

「! はい!」



 とりあえず、飲み物とケーキだけ食べてからカフェを出て。また手を繋ぎながら、携帯会社のアンテナショップに向かう。


 株式ではないが、有限会社に近い経営なので。法人契約で漣の携帯を買うことにした。


 機種は漣が使いやすいのを展示されているのから選び、色は彼女の希望でメタリックブルー。何故その色かと、手続きしている間に聞けば。晁斗が持っているのと似た色にしたかったらしい。


 可愛いらしい理由に、晁斗は彼女の髪を撫でた。



「お待たせ致しました。こちらが、熊谷(くまがい)様のスマートフォンになります」



 強化ガラスフィルムに、一緒に選んだネコミミ付きのカバーも買ったので。両方装着してもらった漣のスマホは、彼女らしい機種に出来上がったのだ。


 アンテナショップを後にしてから、晁斗はレストスペースでそのスマホにアプリ、同期、連絡帳の作成など。


 漣に教えるのも兼ねて、ひと通り作業させたのだった。



「うっし。ちぃっと疲れただろ? 飯行こうぜ?」

「ご飯〜行きますー」



 体力よりも頭を使ったので、漣も少しばかり疲れたらしい。手でなく、腕にしがみつくようにさせてから駐車場に戻り。


 晁斗達はショッピングセンターを後にしたのだった。

次回は土曜日〜

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