22-6.抱き止めて
お待たせ致しましたー
*・*・*
いつだったかは、燈にも思い出せない。
ある意味、弟弟子の後輩である古厩菜幸に、特別な感情を抱くようになったのかを。
休憩時間中に、ウィンタージュの裏手で一服した時。今日はバレンタインだと言うのを思い出して。
ああ、去年はどうだったかと思い出してはみたが。
菜幸はいつも通りで、他のバイト先や万屋メンバーにも既製品を配ってただけのような。だが、今年はまだ誰も受け取っていない。
なら、今年は燈だけに渡してくれるのか。それがどうしてか、楽しみでいるのだ。あの事件をきっかけに、自らの幸せを絶とうと決めたはずなのに。
「……年かなあ?」
「燈先輩は、全然若いっすよ!!」
「!?……菜幸ちゃん?」
やけに明るい声に驚いたが、振り返れば彼女の顔はわかりやすいくらいに、真っ赤だった。
その顔の意味が、わからないくらい燈は歳を重ねていると自覚はしたが。
「……知ってたっす」
「? 何が?」
いきなりの話題の切り替えに、今度は意味がわからず首を傾げるしか出来なかった。
すると、菜幸は少し俯いていた顔を上げて、燈と目を合わせた。
「燈先輩が……昔の事件をきっかけに。ご自分の幸せを絶とうとしてるのっす!!」
「!?……どうして、それを?!」
「…………ウィンタージュに入った直後。先輩とオーナーの話を、たまたま聞いてしまったからです」
それは、燈がいい年なのに誰ともお付き合いもしないことを克己に聞かれていた時。
菜幸は経理の仕事に入ったばかりだったので、わからない箇所を聞きに行った時だったらしい。そこで、聞いてしまったのだ。
友人とは言え、大切な女性を目の前で失った自分が、誰かと幸せになれるなんて考えられない、と。その話を聞いた瞬間には、もう燈に心を寄せていたと自覚したそうだ。
だから、燈の気の済むまで待とうと決めたのだが。
年々、彼が菜幸に少しだけでも心を寄せてくれていると気づいた時には。どうしていいのかわからなかった。
だから、今日のためにバレンタインチョコを用意しても、本当に告げていいのか悩んだらしい。
その正直で切実な告白に、燈は心臓が痛いくらいに動き出すのを自覚した。
「……菜幸ちゃん」
「だから……教えて欲しいんす! 先輩は私のこ」
「もう、充分にわかったよ」
話の流れで、いい加減に自覚した男でも好いてくれていると言うのなら、もう迷うまい。
燈は彼女の手にしてる包みを潰さないようにしながら抱きしめて。今出来る言葉を口にしたのだった。
「せ……先輩!?」
「ありがとう……。こんな僕でも好きになってくれて」
「……『こんな』じゃ、ないっすよ?」
「……うん」
十くらい年下の女の子に言われてしまうとは思わなかったが、不思議と嫌じゃない。
それと。亡くなった友人である彼女にも、きちんと謝れるような気がしたのだ。
次回はデートに戻ります
更新は水曜日〜




