Boy's Side 16 ~呼び出されよう~
つい先日に改称したばかりの中央公園。その新しい呼称を生憎と僕は覚えていないけれど、周囲の少なくない家族連れに聞けば分かるだろうか?
暖かいを少し通り越してしまった陽射しに、汗が滲む。
末野さんからメールで呼び出され、街まで出て来たのには別に疚しい下心があったわけでも、物理の課題に嫌気が差した訳でもない。でも今の自分にはのこのこ、とか、ひょいひょい、といった副詞が似合いそうだとは、自分でも思う。
僕と末野さんの接点など、エージ以外に有り得ないので、話があるとすればこれまたエージ絡みのこと以外は有り得ない。先日の二人の対談では、寄りを戻すとかそんな話はなかったようだけれど、末野さんがそのところについて何か思う所があるのでは?とは、思わずにはいられない。
二人の復縁は素直には喜べない。二人が仲睦まじくやってくれている分にはいいのだけれど、またいつものパターンで破局、となれば八十島さんの中でエージ株が底を打つどころか、突き破る。それはやっぱり面白くないことになるだろう。
いくら頭の中で考えを巡らせてみても、答えは出てこない。そもそも他人の話だ、ということに気付くのと、ベンチにかけて本に読み耽るショートカットの女性の横顔が見覚えのあるものだと気付くのがほぼ同時だった。
「末野……さん?」
「あぁ、和泉君。唐突に呼び出したりしてゴメンね」
細い指が栞を摘まんで本を伏せる。その声とゆったりとした仕種にようやくその人が末野さんであると確信できた。
「髪、切っちゃったんだ?」
「あ、うん。失恋して髪を切るなんて、やっぱりベタだったかな?」
照れくさそうに短い髪に細い指を差し込んではにかむ末野さん。
僕の知っている末野さんと言えば、ちょっと困った顔でお説教する文系女子しかおらず、目の前の女性とはちょっと結び付かない。
そんな違和感に包まれていては似合っている、などとはとてもじゃないけれど言えなかった。
「危うく気付かずに通り過ぎちゃうところだったよ」
「あはは。やっぱり似合ってないか」
「そんなこと言ってないけれど……だいたい、失恋って言ったって、末野さんが自分で捨てたようなものでしょ?」
「えっ?あ、あぁ、うん。そういうこと……になる、のかな?」
疑問形の肯定の後で頭を掻く。
「未練がない訳でもないけど、あの時をおいて他に引き際はなかったと思うし、それは間違いじゃなかったって思ってる」
言葉を切った末野さんは、そう断言する割りに吹っ切れてはいないといった顔だ。話を続けることを躊躇っている風にも見える。
「八十島さんとか、ミィーナさんとか、かるた部の面々とよろしくやっているみたいだしね」




