Boy's Side 15 ~その人を懐かしもう~
エージが部活動を早退した理由は、夜にでも電話がかかってくるだろうと思っていたけれど、結局、何の連絡もなかった。女の子絡みだと言う八十島さんの推理が信憑性を増す。そうであってもなくても、周囲からしたらきっとしょうもない理由に違いないだろう。そんなことだから、八十島さんにとやかく言われるのに。
しかし翌朝教室で、えらく消沈していているエージを見付けてしまっては、流石に何か良くないことがあったのでは?と、考えてしまう。項垂れているエージなんて滅多に目にするものじゃないので、何て声をかけたらいいのか、分からない。
何とか台詞を捻り出して、昨日の事を訊ねてみても、「また昼に」と言うだけで上の空だ。まるで昨日部室を飛び出して行った時に今日の分の元気まで全部使いきってしまったかのようだった。
外国語というのはやはり難解だ。その必要性に疑問を投じることはしないけれど、バベルの塔を建てようと言い出した人の責任はきっちりと追求したい。
ともあれ、今日も無事午前中の授業は終了。部室でエージと二人でお弁当タイムだ。
改めて昨日の件について訊ねてみれば、概ね八十島さんの推理通りだった。
「ナミからメールで呼び出されたんだ」
エージを小躍りさせたお誘いの相手は、納得のいく人物であると同時にちょっとした意外性も持ち合わせていた。エージ程になれば「別れても友達」を簡単に実現させるのか?
もしかして早くも寄りが戻ったのか?とも思ったれど、朝の様子からしてそれはないか。末野さんとの対談はエージにとって気分の良い話ではなかったのは間違いなさそうなので、話を掘り下げるに当たっては少し注意が必要かもしれない。
「中学卒業からまだ一月程しか経ってないのに、何だか懐かしいね。どう?元気だった?」
「元気っつーか、まぁ、相変わらずだったな。久し振りだってーのに、まーた小言言われたよ。
和泉に迷惑かけるなとか、高校生になったんだからもう少し落ち着きなさいとか……説教されに行ったようなもんさ」
言いながらどこか嬉しそうな苦笑いだ。眉間に小皺を寄せた末野さんがありありと脳裏に浮かんで僕も苦笑い。
「っつーか和泉。何かナミのヤツ、お前のこと気にしていたぜ?」
「は?何で?」
そんなフラグ立てた覚えは全くないのだけれど。末野さんは歴代エージの彼女の中でも長く続いていた方なので、それなりに面識はあるけれど、かと言って親密な仲というわけではない。一度か二度、エージを挟んで他愛もない話をしたくらいのもので、連絡先とかも知らないし。エージ繋がりのおかげで下手なクラスメイトよりかは近しい存在、かも?というのが僕の認識する末野さんとの距離感だ。
「分かんねぇけど、かるた部の話とかも知ってたし、てっきりお前ら連絡取り合ってるのか?とも思ったんだけど。そしたら別れ際にお前の連絡先聞かれて。んん?って思いながらも教えちゃったんだけど、今思うとアレ、マズかったよな?悪い」
謝るのはいいんだけれど、携帯をつつく場面があったのならその時についでに事の次第を報告してくれてもよかったんじゃないだろうか?
一応、ということで末野さんのアドレスを教えられて、接点はここに記された。




