Girl's Side 18 ~印象~
「ミィーナの自己紹介、なかなかに印象的だったわよ。ちっちゃい体を目一杯張っちゃって。あれにキュンと来なかったら嘘だわ」
「お願いだからそこは嘘だと言って……」
「というのは半分冗談だけれど。あなたの決意の程は伝わってきたわよ。あれが、高校デビュー」
違うよ、とは言えなかった。否定すればしただけ、深みにハマるのが目に見えている。
「で、残り半分の本音を言えば、そうやって一歩踏み出してみせたミィーナは、ちょっと格好良かった。自分を変えたいという決意、必死さ。そういう熱のこもった格好良さも、私の持ち合わせていないものね」
「可愛いげがない、格好良くもない。ないない尽くしの、とんだ完璧超人だね」
「ついでに言えば、飛ばないわよ」
傾いた陽射しの加減か、八十島さんの笑顔が柔らかい。
自分が自分で失敗でしかなかったと思っていた行いが、思いの外八十島さんには高く評価されているみたいで何だか気恥ずかしい。それが八十島さん独自の事情に基づく評価だと分かっているけれど、大袈裟な話、誰かに認めてもらえたのには違いはない。
「八十島さんがあの自己紹介にどれだけ感銘を受けたか知らないけれど。ボクとしては忘れて欲しいくらいで。この名前がコンプレックスだから、それで弄られるくらいなら、って」
「この学校にそんな暇なことをする人なんて、まずいないわよ。あ、でも名前がコンプレックスっていうのも私と同じね。八十島なんて古めかしい苗字もまた、私のイメージを勝手に作っているものの一つだもの」
「確かに古風でどことなく厳めしい感じがする苗字だよね」
頷いて返すと、横目で此方を窺っていた八十島さんの目線が急に鋭さを増して、ボクに突き刺さる。ボク、何か失言でもしただろうか?
「でも、ボクの方が変な名前だよね。この苗字を読める人なんて、そうはいないよ。昔のお相撲さんとか、歌手に同じ名前の人がいるみたいだけれど……」
「そうね、私も最初は読めなかったわ」
まだどこか、棘を感じる言葉。
しかしぽんと手を打つと、八十島さんの顔に書かれていた不機嫌の文字は笑顔で塗り潰された。
「男女川の読みを忘れないよう、私は今後もミィーナのことをミィーナと呼び続けることをここに誓うわ」
「それは本当に止めて!」
「でもミィーナがそれを嫌がっているのを知っているから、ここは公平にミィーナも私のことを可愛いらしいあだ名で呼びなさい」




