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Boy's Side 12 ~コテンパンにしよう~

やっぱりと言うか何と言うか。そんな気はしていたけれど、八十島さんはかるたも強かった。


「違うわ。お話にならないくらいに竜田川君が弱すぎるのよ」


八十島さんはつまらなさそうにそう言い放った。確かにエージは殆ど反応できていなかった。途中から破れかぶれで手を出すものだから、自陣に30枚残しての大敗。これには流石に八十島さんでなくても呆れてしまう。僕と大江山さんの対戦はまだまだ決着がつきそうもなかったので、その30枚を5対25で分けて仕切り直しても八十島さんの勝利で終わった。


「だってさ、あれだけあったらそっちの方にありそうな気がするじゃん?」


「何で確率論になってるんだよ。空札だってあるんだから、ちゃんと聞いて取らないと」


「だからちゃんと聞いていたら取れないんだって!」


エージの悲痛な叫びが部室に響く。飄々としていたのは上辺だけで、八十島さんにコテンパンにされたのはやっぱり相当堪えているみたいだった。


「竜田川君、貴方下の句から上の句は言える?」


「へっ?」


「えっ?」

「え……」


「……」


気まずい沈黙。どうやらエージは決まり字とかそういうレベルのレベルにいないらしい。

僕だって完璧とは言えないけれど8、9割は言える。というか、競技かるたは上の句を詠んでいるうちに下の句しか書かれていない札を取るわけだから、それが出来ないようではそれこそ本当にお話にもならない。勝負にならなくて当然だ。取り札の方、下の句が詠まれるまで悠長に相手が待ってくれるはずがない。


「……いつだったか勧誘に来た時に「百人一首なんて、3つか4つくらいしか覚えていない」って言ってたけれど、あれから進歩はおろか、努力すらしていないようね」


「うぐっ……」


どうやら図星っぽい。そして八十島さんは不完全燃焼の鬱憤をぶつけたいのか、それとももう、何か機会があればエージをいびり倒すのがライフワークになってしまっているのか、言いたい放題だった。ツンな八十島さんを見るのは初めてなのか、大江山さんがあわあわと取り乱している。


「そんな不真面目なことじゃ困るわよ……主に和泉部長が」


僕が困るのはむしろこういう空気の方なんだけれど……


「ま、まぁ、課題がはっきりと浮き彫りになったってことでいいんじゃないかな?エージに限らず僕らもどの程度覚えているか把握しておいた方が良さそうだね。あんまり覚束ないようだったら実戦練習の前にテストみたいなことでもして基礎力を固めた方がいいかもしれないね」

問3 読み札が残り60枚、自陣が25枚、敵陣が5枚である。詠まれた札に関わらず自分は最速で自陣の札を全て払い取る、対戦相手は決まり字まで聞いて残っていれば札を堅実に取るとしたら、1枚詠んだ後の自陣、敵陣の残り枚数の期待値はそれぞれ幾らか?

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