Boy's Side 9 ~痛い所を突こう~
お昼時の食堂に来たのは初めてだ。思っていたよりも混雑しているけれど、席にはまだまだ余裕がありそうだった。
長い行列のついた幅広いカウンターの奥では、恰幅のいいおばちゃんが大声を張上げて、時に大声で笑い飛ばして、手際よく料理を仕上げている。周りの生徒が抱える料理を見ても、特段何がどうということもない普通の料理にしか見えないし、そもそも僕はまだ食べたことすらないのだけれど、それでも味は保証出来ると思った。あの行列に並ぶ気はしないけれど。
「何か八十島さん攻略の糸口は掴めそう?」
最後に残ったキウイを口に放り込む前に訊いてみる。こんな言い方だと知らない誰かが耳に挟んだら誤解されかねないけれど、八十島さんをモノにしようとかそんな話じゃない。可能ならそれもいいかもしれないけれど、今現在の目標はあくまで普通の部活仲間として普通に仲良くやっていきたい、という慎ましいものだ。
「考えてみたんだけど、きいてくれるか?」
真面目モードのエージはちょっと珍しい。黙って頷く。
「和泉は八十島さんと普通に仲良くやれてるじゃん?」
「やれてる……のかな?」
何を根拠にエージはそんなことを言い出すのやら。単純な比較論で自分と比べてみただけかもしれない。これまで自分が八十島さん交わしたやり取りを振り返っている最中に、エージの言おうとしていることの察しがついた。
「だからさ、和泉から八十島さんに俺のこといいように言っておいてくれよ?」
丸投げの他力本願に呆れて肩を落とした。
そりゃ多少のフォローは必要だろうと思っていたし、そうするつもりではいたけれど、こうもあっさりと投げられると骨を折ろうという気も失せる。何だか知らないけれど、頑張ってみると言っていたのは何だったのだろう?
「僕がエージのことをよく言うだけで八十島さんがエージのこと、見直すと本気で思ってる?」
キッと睨み据えると思いの外エージがたじろぐ。きっと本当は自分でも分かっているんだろう。風評を覆すには行動を起こすしかないと。
「な、なんか和泉、高校に入ってから意地悪くなってないか?」
意地悪く、かどうかは微妙なところだけれど、その指摘に心当たりがないわけでもない。
生ぬるくなってしまったキウイは、しかしまだ若く、苦く、眉をひそめる。
「そんなことないと思うけれど……」
「もしかして八十島さんのがうつったのか?」




