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Boy's Side 7 ~買い物に行こう~

桜の花もそろそろ見頃になろうかという日曜日。買い物に行くというエージに付き合って街へと繰り出した。竜田川(父)からは花見に誘われたけれど、生憎と午後には先約があった。エージに付き添ったのもそれまでのついでといえばついでだ。


「桜、来週までは持たないみたいだね」


「らしいな。ま、うちの親父は葉桜でも一杯やるけどな」


ライスバーガーを頬張りながら外の景色を眺める。見えるのは桜並木などではなく、高いビルに囲まれて蠢く人の波。春先のスクランブルは普段にも増して人の波が激しかった。このうちの何割かが、近くの庭園に花見に出掛けているのだろう。今なら確か、無料開放期間中のはずだ。

押しては寄せ、引いては返す波から弾き出された少女と、ガラスの壁面越しに目が合った。というか、八十島さんだった。


「これだけ人出が多いとナンパも捗るのかしら?」


わざわざ店内にまでやってきてそんな開口一番だった。いや、挨拶代りの憎まれ口だと思うんだけれど、見下すような目線と、顔の半分ほどを覆う影で恐ろしく恐ろしく見えた。明るく清潔な店内でなんでそんな影ができるのか?僕たちの気付かない一瞬のうちに穢れが満ちたかと思えるほどだ。あまりにも怖すぎて、その言葉を冗談だとは断定できない。


「ただの買い物だよ。午後の約束まで時間があったから、エージの買い物に付き合っていただけ」


「あら、仲がいいのね。ひょっとして、二人でデートだったとか?お花見デート」


傍らでエージが盛大にオレンジジュースを噴いていた。っていうか、僕のジーンズにまでかかっていた。


「そんなBL要素はここにはない」


「冗談よ。ごめんなさい、ちょっと人波に当てられてイライラしていたのね。謝るわ」


「ならいいんだけれど……」


「人を待たせているの。会って早々で申し訳ないけれど、今日はこれで失礼させてもらうわね」


八十島さんが踵を返すと、彼女の長い黒髪がしなやかに揺れる。入り口近くで振り返ると小さく手を振って微笑んだ。その様はやはり絵になる美少女としか言い様がなかった。


「それじゃぁ、またね」


そう言って八十島さんが再び雑踏の中に消えた後で、ようやくエージが口を開いた。


「誰だよ、八十島さんのこと完璧超人とか言い出したヤツは。マイペース過ぎるだろ?」


「僕はもう、何だか慣れちゃったよ」


八十島さんに睨まれている間に着信のあったメールを確認する。差出人は竜田川(父)。内容は、「和泉君の用事が済み次第、夜桜を見に行かないかね?」とのことだった。この人もこの人でマイペースというか、ちょっと強引なところがあるのは否めない。

同じメールがエージの方にも届いていたらしく、二人で顔を見合わせて、失笑するのだった。

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