Boy's Side 5 ~学習しよう~
部長として、部員の不仲は看過できない。八十島さんに色々と言われて流石のエージも随分と凹んでいるみたいだった。
事のあった翌日。高校生になって初の週末の午後には、エージからの相談を受ける為に久し振りに竜田川邸を訪れていた。
エージの部屋には柄にもなくR&Bが流れていた。指摘すると苦笑いで返された。
「前のカノジョのシュミだよ」
聞くだけ野暮だった。
しっとりとして、それでいて力強いフレーズは、心に染み込むと言うよりも、塗り込められるといった感覚の方が近い。
「英語の勉強になるとか言ってたけど、んなワケないよな」
「そうかな?少なくともヒアリングにはなってるだろうし、こういう歌ってそれほど難しい単語は使ってないでしょ?難しいのは言い回しとか詩的表現だけで」
「でもそういうのって、結局のところ受験勉強には役に立たないじゃん?実際、ナミは落ちちゃってるワケだし」
それを言っちゃうのか……身も蓋もない。
高校が別々になって、それで別れたってのは聞いていたけれど。こうやってネタに出来るってことはすっかり割り切れているんだな。確かエージの方から熱烈なアタックをかけていたと記憶しているんだけれど。流石、遊んでるヤツは違うな、と思ったら、そうでもなかった。
「あー、マジ好きだったのにな」
「それ、毎回言ってないか?」
「ん?そうか?」
どうやら本人は自覚がないらしい。
大抵、エージが可愛い子にぞっこんになる→猛攻撃をかけて交際に漕ぎ着ける→デート中に別の女の子に鼻の下を伸ばして愛想を尽かされる、ってのがいつものお決まりのパターンとして、ほぼ確立している。わざとそうなるように仕向けているんじゃないかと勘繰ってしまうほど、あっさりとフラれてしまう。エージから振ったことってあっただろうか?
「惚れっぽいと言えばまだマシに聞こえるけれど、それって単に気持ちが浮わついているだけとも言えるからね。彼女がいるなら自制しなよって、何回か言ったよね?それが出来ないから、末野さんとも別れる破目になったんじゃないの?」
「ナミはそんなんじゃねぇよ」
「本当に?別れ話の中で末野さん、「私がいないところで栄二が他の女の子のこと見てるんじゃないかって……」みたいなことは言ってなかった?」
「うぐっ……」
当て推量でも、外れる気はしなかった。
「仮に末野さんが同じ高校だったとしても。高校入学なんて大きな節目で、新しい出会いも盛り沢山の時期に、エージが他の女の子に目を奪われずにいられたかは疑問だけれどね」




