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Girl's Side 10 ~情報~

真木さんに助言するにしても、まずは確認しておくべきポイントがある。そこを確認しておかないことには何を考えても、何を話しても無駄でしかない。。


「先輩に彼女がいる()()()っていうのは、誰かに聞いた話なの?思い込みとか、誤解とかじゃなくて?」


ここが勘違いっていうのは、少女漫画なんかだとよくある話。親しげに街を歩いていた女性が、妹とか、バカみたいに若いお母さんだったとか。「先輩に好きな人がいる」っていう情報にそれっぽく見えてしまう場面が加わって、それが事実として認識されてしまっているケースとか。で、先輩の好きな人ってのが実は……

なんて、そこまで都合のいい話が現実にあるとは思っていないけれど。そこに何らかの誤解の余地はありそうだし、むしろあってくれないと、これ以上はボクなんかの手に余る話でしかない。

しかし、八十島さんはボクの淡い期待を一撃で粉砕してくれた。


「二年の仁木さんが、そうよ」


つまりそれは八十島さんの耳に届く程度には公の情報であって、それくらいの確度もあるということだろう。いきなり手詰まりだ。

泣きそうな顔の真木さんを前に、彼女の話を振り返る。ただの惚気話でも、彼女のことを知るとっかかりにはなる。と、そこで一つ重要な点が抜け落ちている事に気付く。


「八十島さん。ムラサメ先輩って、どんな人なの?」


最重要人物の情報が、まるで足りていない。ある程度分かっているつもりでも、それは全部真木さんからの情報。色眼鏡が掛かっていないとは言えない。もっと客観的な情報が欲しかった。


「3年2組村雨晶、弓道部副部長、成績は上の中、県外の国立大学への進学を志望。明朗活発で屈託のない性格に加えて面倒見もいいことから、男女問わず人気者だそうよ。好きな食べ物、BLTサンドのトマト増し。お気に入りのアーティスト、supercell。現在交際中の男性、ナシ。現在交際中の女性、同じ弓道部で2年4組の仁木瞳」


どこかの誰かさんみたいに“女誑し”属性でもついていれば、オススメしないという助言もすんなりとできたのに。思ってたよりも詳しい八十島さん情報では、非の打ち所はなかった。推すにも退くにも、いよいよ本格的に手詰まりなんだけれど。

救いを求めて八十島さんに視線を送るけれど、八十島さんは「自分の役目は果たした」とでも言わんばかりだ。


「……どうしたらいいのか、分からない、っていう相談だったけれど。真木さんはどうしたいの?」


訊ねてみても返事はなかった。どうしたいのかも分からない。自分で判断が下せない。だから相談に来たんだろうけれど。

そんな困った状況に陥ってしまうのが恋ならば、ボクはそんなもの要らない、なんて思ってしまう。


「仮に、ボクや八十島さんがこうしたらいいよ、って言ったら、そうするの?」


質問を重ねてみても、やっぱり返事はない。

この質問に答えられないということは、なにかしらの助言があっても受け入れられないかもしれないということ。自分で判断を下せないのと同様に、他の誰にも決められたくない。選びたくない、決定したくない。

想いを諦めるにしろ、横槍を押し通すにしろ、何処かで何か遺恨が残るだろう。真木さんはきっとそれをよしとすることが出来ないんだろう。誰もがハッピーで終われる解決策なんてないって当人が一番分かっている。だから、悩んでしまう。

そうだとすれば、相談に来たのも本気で解決を求めて来たのではなく、単に話を聞いて欲しかっただけなのかも?であれば、ボクたちは充分にその役目を果たしたんじゃないだろうか?

そう思った矢先、パン!と手を打つ音が鳴り響いた。


「それじゃあ、こうしましょう、真木さん」


これまでの話の流れなんてまるで無視して、八十島は微笑みながら提案した。


「村雨先輩にフラれましょう」

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