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Girl's Side 8 ~先輩~

八十島さんの安請け合いに背中を押されたのか、それとも気圧されたのか。相談者、真木さんはぽつりぽつりと語り始めた。


「村雨先輩は同じ団地に住んでて、小、中とずっとお世話になっていたんです。先輩が高校に上がってからもよく勉強をみてもらって。先輩、教えるのが上手だから、成績はぐんぐん伸びて。お蔭で憧れの先輩と同じこの高校に入れたんです。合格発表の時も先輩、自分の事のように喜んでくれて。あの時初めて私、自分の気持ちに気付いたんです。あ、私、村雨先輩のことが好きなんだなぁ~……って」


完全に惚気けだった。夢見心地の乙女が、目の前にいた。年頃の女の子の相談事なんて、かなり高い確率で恋愛にまつわるエトセトラだろうと踏んでいたけれど、正にビンゴだ。そしてそれはボクにとっては完全に守備範囲外。早くも逃げ出したい気持ちで一杯になった。

惚気けは止まることを知らない。


「あぁ、私は先輩の期待に応えたくって頑張ってたんだ、この笑顔が見たくって頑張ってたんだ、って。「4月からは一緒の学校か~!また一年間、よろしくな!」って顔を綻ばせる先輩が、すっごく眩しくって。例えそれがたったの一年しかなくっても、それはきっと幸せに満ちた素敵な日々になるって、胸が弾んだわ」


心なしか瞳を潤ませる真木さんに、八十島さんが口を挟む。


「えっと一つ確認させてもらってもいいかしら?村雨先輩って、弓道部の副部長の、村雨晶先輩のことで間違いないかしら?」


「えっ?八十島さん、知ってるの?」


驚いたボクに八十島さんが頷く。真木さんも驚きながらも肯定した。

もちろん、ボクはムラサメ先輩なんて知らない。今の話から辛うじて先輩が三年生であることは察せられたけれど、それ以上のことはボクには分からない。それだって他の人ならもっと容易に察しただろう。むしろムラサメ先輩が有名な人なら、先輩の学年その他プロフィールは、一般常識の類いと言われるのかもしれない。

あぁでも、ムラサメ先輩が有名人だから八十島さんの耳に入ったのではなくて、 きっと逆なんだろうな、と直ぐに思い到る。

真木さんのどこか誇らしげな顔は、しかし何かに気付くとみるみるうちに曇ってしまった。最初に教室に相談に来た時と似て非なる面持ちに、八十島さんが話を促した。


「それで?村雨先輩が素敵な先輩だというのはよく分かったけれど、そんな話をしに来た訳ではないのでしょう?」


そうだった。真木さんは何か相談があると言ってやって来たんだった。この流れだと「ムラサメ先輩に告白しようと思うんですけれど……」とか、そんなところかな?今一歩の勇気がなくて……って話ならボクにも細やかな応援ができるかもしれない。


「村雨先輩に告白しようと思うけれど……」


真木さんは今正にボクの頭の中に浮かんだフレーズを口にした。


「でも、先輩、彼女がいるみたいなんです」


現実はそんなに甘くはなかった。

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