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黒星リク



「おかえり、ケイ。ちょっとお邪魔してるよ」


 ケイが自室のドアを開けると、リクが本棚を漁っていた。リクはケイの帰りを目視してもなお慌てる様子はなく、平然と漫画本を探し続けている。


「何してんだよ、人の部屋で。勝手に入るなって言っただろ、リク」


「ごめんごめん、忘れてた。この続きを借りたら出て行くからさ。というか、ケイ。漫画はきちんと順番通りに並べなよ。探し辛いよ」


 リクはそう言うと、某海賊漫画の七十巻と七十一巻を手に取った。


「あ、そうだ、ケイ。あとでゲームしない?」


 ケイの隣を通り過ぎてすぐ、リクが振り返って言った。


「絶対しない」


「僕に勝てないから?」


「うるせぇ、早く出て行け」


 ケイはリクを部屋から追い出し、そのまま力強くドアを閉めた。


「あ、そうだ、ケイ。昨日か一昨日、駅の方で魔族が出たみたいだから気を付けなよ。夜の間は一人で出歩くなって、母さんが言ってたから。それじゃ」


 足音が遠くなっていくのを聞き、ケイはため息を吐いた。


「どうせ、小さな扉から出てきたやつだろ」



 数十年ほど前から世界中に『魔族』と呼ばれる化物が現れるようになった。

 その原因と考えられているのは、魔族出現の少し前から世界各地に現れた『扉』と呼ばれる謎の構造物だった。その構造物は『扉』とは呼ばれているものの、人類の力では開く事も、破壊する事も出来なかった。

 しかし、その扉がひとたび開かれれば、世界には何かしらの変異がもたらされた。その最たる例の一つが魔族の出現だった。恐竜を思わせるような巨大な獣、空を覆うほどの巨鳥、あるいは、人の理解を超えた異形の怪物たち。それらは姿形こそ異なるものの、人類に牙を剥く存在という点では共通していた。そして、いつしか人々はそれらを総称して『魔族』と呼ぶようになった。


 また、各地に出現した扉はそれぞれに引き起こす変異の規模が異なっていた。

 一般的に、質素で小さな扉が開かれれば変異は小規模に留まる。一方、荘厳かつ巨大な扉が開かれた際にはその規模もまた甚大なものとなった。

 ただ、ここ数年の日本では、大きな扉が開かれた事は一度も無かった。


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