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おいしい薬の作りかた 〜近未来の魔法世界に転生したのに、なぜだかみんな薬草だけは生でかじってばかりです〜  作者: りっく
第2章 騎士団の協力者とあの日の災い

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5.魔法士との合流

 店の前に停めてあった魔導車に荷物を積み、乗り込む。

 レイモンドが運転席、エレノアが助手席だ。


「運転できるんですね、レイモンド様」

「騎士には必須だからな。士官学校の授業でみな免許を取るんだ」

「へぇ……! 知らなかったです」

「とはいえ魔力を流して目的地を登録すれば、それ以降は自動運転だ。難しいこともないさ。……魔物が飛び出したりしてこなきゃな」

「それが怖いんですが……」


 脅すように声のトーンを落としたレイモンドの言葉に、エレノアは身震いする。

 

 タイヤをコロコロ回して走るのではなく、魔力をジェットエネルギーに変換して走る魔導車は、エレノアからすれば未知のテクノロジーだ。

 何がどうなって動いているのかわからないから、運転できる気もしない。トラブルがあったらそこで詰みだ。

 エレノアの不安をよそに車は快調に街の大通りを抜け、王都へと続く街道を猛スピードで走っていった。



 窓の外の景色がさまざまに移り変わる魔導車での旅路は、かなり楽しかった。

 

 そして車は王都に辿り着き、スピードを落とす。

 見上げても見下ろしても道がある不思議な景色に、エレノアはきょろきょろと辺りを見渡した。

 進む方角や歩道や車道によって、道が階層に分かれているのだ。

 人の往来に最適化された道路を通って、魔導車は王都の北側へ向かっていく。

 

 エレノアが最後に王都を訪れたのは、幼少期、まだ前世の記憶を思い出す前のことだ。

 今になって来てみると、その奇特さに改めて目を見張ることになる。


 建物は全て、見る角度で色を変えるオーロラのような魔法石で作られた高階層のビルばかり。

 魔法石の反射で、街全体が虹色にキラキラと輝く。

 空には音もなくドローンが飛び交うが、道ゆく人は気にもとめない。これが日常なのだろう。


 車窓からその景色を見て、エレノアは目を輝かせた。

 まさに、近未来の魔法都市。

 景色に釘付けになっているエレノアを見て、レイモンドはふふっと鼻を鳴らして笑う。


「王都が気になるか? 遠征が終わったら、帰りに寄ってくか」

「え!? いいんですか」

「ああ、礼は弾むさ。それを楽しみに一ヶ月頑張ってもらわないとだが」

「俄然やる気が湧いてきました!」


 エレノアは子どものように素直に声を弾ませる。

 今から戦地に向かうとは思えない和気藹々とした雰囲気で、車は王都を抜けた。



   *   *   *



 騎士団の前哨基地に立ち寄り、大量の薬草を車に積み込む。

 それが終われば、目指すは魔物が大量発生しているという山の奥だ。

 すでにレイモンドの仲間たちが先行していて、ベースキャンプを設営しているらしい。


「見えてきました、あれですか?」

「ああ。結構設営も進んでるな」


 機嫌よくレイモンドは言う。設営をあまり手伝いたくなかったと見える。

 魔導車が並ぶベースの一角にレイモンドも車を停め、薬草の詰まった木箱を抱えて車を降りる。

 エレノアもトランクを持って、その後に続いた。


「二級騎士レイモンド、到着しました。薬師エレノアも一緒です」

「はっ、はじめまして! よろしくお願いします!」


 忙しそうに動き回っている騎士たちはこちらに目もくれない。

 代わりにレイモンドとエレノアを出迎えたのは、設営に参加していない魔法士や治癒師たちだ。ロゼもいる。


「無事着いてよかったわ。エレノア、初めてのことで不安だと思うけど、この人たちが守ってくれるから大丈夫よ」

「魔法士のガリアです。どうぞよろしく」

「……メメル。わたしがいればキャンプは安全」


 ロゼが紹介したのは、二人の魔法士だ。

 穏やかな笑みを浮かべる、もふもふのあご髭をたくわえた中年のおじさん魔法士、ガリア。

 そしてローブのフードと長い銀の前髪で顔がほとんど見えない、小柄な魔法士がメメルだ。

 声で少女だということはわかったが、セリフはやけに頼もしい。雰囲気の掴めない人だ。


「エレノアです。魔法の腕は平凡ですが、薬作りが得意です。よろしくお願いします!」


 改めて挨拶をすると、ロゼは満足そうに頷いた。


「治癒師もあとでゆっくり紹介するわ。数が多いから関わる順番にね」


 ロゼの後ろには、5名の治癒師が並んでいた。

 髪の色も肌の色も違うが、目だけが同じ金色の集団はどこか異質だ。

 一気に紹介されても覚えられなくて無礼を働いてしまいそうなので、ロゼの気遣いに感謝する。


「は、はい。お願いします。それで、私は何を……」


 チラリとレイモンドの方を見るが、彼は騎士団の一員として設営に行かなくてはならないようだった。

 上官に呼ばれて慌てて走っていくレイモンドの姿を見つめて途方に暮れていると、ロゼが苦笑した。


「頼りにならない男ね。……私たちは、昼食作りでもしましょうか。エレノア、手伝ってくれる?」

「はいっ! 料理は人並みに……お役に立てるかと」

「……浅慮。キャンプ料理は、一味違う」


 ぼそっと隣でメメルが言って、すでに設置されている調理場らしきタープのかかった場所へ一人歩いていく。

 呆気に取られたエレノアはロゼと顔を見合わせて、メメルの後を追った。 

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