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怪物の花園  作者: 賭命始祖


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13/18

13.半日の自由時間’(雑多な視点から)

 監獄は実力至上主義の世界。《ベラ》と《ランク》、毎日の時間割以外に外界によって整備されたルールは存在しない。単純明快かつ、非常に粗雑。


 正しい教育を受けなかった入居者達はそれでも秩序を保つべく、自ら制度を生み出した。そうでなければ今頃この監獄に、ヴィアという存在もシュナという存在もなかったであろう。秩序を保つことはたいていの場合、結果として弱き者を救う。――――そう、弱き者に救いと絶対的な壁を、押しつける。


 入居者自身によって生み出された制度は酷く人間的である。


 そのうちの一つは【派閥】と呼ばれる。集団を形成することで争いを抑制し、基本的なルールを流布させる。一級三名をそれぞれ筆頭とする三つの【派閥】が最も大きい。この三つの派閥はその武力、権力の比類なき大きさからまとめて【三頭竜】と呼ばれる。


 不文律として一級と二級は必ず【三頭竜】のどれか一つに属し、他の【派閥】に属さない。この不文律は監獄内の勢力均衡を担っており、今までのところその役割を十全すぎるほどに果たしていた。ちなみに誰であっても【三頭竜】の内、属せるのは一つだけだ。アイナの【派閥】にも入って、フュスラの【派閥】にも入るといったことはできない。


 ただでさえ恐れられる一級だが、この【派閥】制度によりその影響力を拡大。確かにこの監獄内で最も強く、力のある者は彼女達だと知らしめるようになった。


 三,四級あたりになると、【三頭竜】のどれか一つに入り、二級への昇格が見込めないようになると自らが新たな【派閥】を形成し、独自の人脈を構築するものも多い。成功し武力に関係なく、莫大な影響力を持つ者もいる。そういった【派閥】は監獄内で【三頭竜】に次ぐ力を持つ。


 五,六,七、八級は【三頭竜】に所属こそできるものの、頭数には数えられないことが多く、所属条件となる《ベラ》の必要納入額も負担割合としては増える。だが、【三頭竜】のいずれかに所属することで得られる安全の保証のメリットは計り知れないため、殆ど全てのものがどれかに加入する。


 お気づきのようにこの説明に従うと、入居者のほぼ全てが【三頭竜】のどれかに所属していることになる。そしてそれがこの監獄の平穏を保っていた。下級であろうと誰かを虐げればそれはその【派閥】に喧嘩を売った――――つまりは一級に喧嘩を売ったことと等しくなる。誰だって、一級の恨みは買いたくない。いくら《ベラ》を詰まれても嫌、というか無理。


 さて、九、十級はどうなるのか?


 結論から言って、彼等彼女等は【三頭竜】に加入できない。それは決まっている。代わりにとある制度が確立している。


 制度、【絡の籠】。

 気づいたかもしれないが籠絡をごちゃごちゃと組み替えた名前である。ちなみに明文化されたのはここ最近の話である。


 この制度は締結時の《ランク》で四級以上が一人と九級以下が一人揃って成り立つ。内容は単純で、五級以上の人が九級以下の人を保護下に置くという制度だ。保護下に置くという名目ではあるが実態は惚れたのなんだのといった内容が非常に多い。惚れた弱みである。


 この【絡の籠】制度はある意味、【派閥】よりも強力な保護制度である。【絡の籠】を結ぶということは、その人が高位ランクのお気に入りであることを如実に示す。四級以上と言えば【三頭竜】の中でも実力者である。手を出さない方がお互いにとって得ということだ。


 この制度の恩恵を一番受けているのは誰が見ても間違いなくシュナである。


 シュナは現在、アイナ、フュスラを含む一級三名全員と【絡の籠】を締結。いわば【三頭竜】のトップ全てから最高級の保護を受けている状態であった。例え二級や三級であろうとシュナに手出しをすることはできない。シュナに手出しをすることはすなわち、監獄内で今後一切【三頭竜】に属せず一級に恨まれ続けるということであるからだ。


 シュナが圧倒的であるとはいえ、他の九、十級の多くの人も【絡の籠】を締結している。うまく行動できれば、監獄内で実力が最底辺だったとしても高位ランクと変わらない生活ができる。


 他にも細かな制度は数多くあるが、とりあえずこの二つの制度によって監獄は平穏を保っているのであった。


 十級で【絡の籠】を締結する気のないヴィアのような人には直接的には何一つ救いをもたらさないが・・・・・・。ヴィアは同室がシュナということもあって、今まで災難を逃れていた口であった。間接的とはいえ、【絡の籠】に助けられているのである。


 だが平穏であるはずの監獄内にときたま不穏な影が湧き出ることがある――――。


  ――――――――――――――


 一週間に一度の半日の自由時間であった。様々なことができるが、同じ【派閥】のメンバーで談話に興じるというのはよくあることだった。《ベラ》はかからないし、情報の交換もできる。日頃の鬱憤を誰かに吐き出すことだって可能である。


「最近どう?こっちはつまらんね――。訓練はきついし、最近両腕一気に切られたわ!止めてくれって感じよ」

「俺もそんなもんやで。拷問みたく痛めつけられないから良いけどさ、内蔵までもってかれると食事のとき、治療が終わってないように感じて食べ物が腹から全部でできそうでこわいんよな」

「あははっ、ぐろっ!止めろよ、飯がまずくなるわ」


 気心しれた仲である五、六人程度のメンバーが揃い、遠慮なしの大声で会話が飛び交う。最初の方は愚痴が大半であったが、話は歪んだ方向へと進んでいく。


「ねぇ、そいやおれ、今回最底辺との試合に当たったわ!」

「え、まじ??ずるすぎんだけど!がちで楽やん」

「ほんとほんと、あいつ抵抗しなくてさ――――おもろすぎ」


 小さく笑ってその会話に次々と人が参加する。十級を含めた最底辺、とりわけ《刻印》の発動ができない少女はこの閉鎖された監獄において格好の話のネタであった。見上げることに絶望すれば、見下すほうが何千倍も楽である。


「どうせお前のことやから、散々いたぶったんやろ?」

「あれ、なんでばれた?まぁ、た、の、し、ま、せていただしましたぁ!」


 おどけた声に笑い声が爆発する。粗野な笑い。


「で、あいつどんな声で鳴いたん?」


 答えを待って、その場は一転して静かになった。問われた少年は首を傾げる。


「あれ、そういや、ず――――と黙ってたわ。刺す度に声を我慢して身体が震えるのがなんかおもろくてさぁ?でも、途中から俺もむきになってところ構わず針を刺しまくったけど、これが何にも喋らないんだわ」


 今回は大きな笑い声は響かなかった。代わりに意味深に、その場の少年達はにやつく顔を会わせた。考えていることは同じであった。


 少年達の勢いは、一度付けばそう簡単には止まらない。


「――――鳴くとこみたくね??」

「やるか?試合じゃなくても、廊下がどっかでふっかければいいだろ」

「さすがにまずいだろ?一応、上から過剰の暴力は禁止されてる」

「いや、あいつは十級だから【三頭竜】にも加入してない。俺達が騒がなきゃばれん」

「無愛想でかわいくもなんともないから、【絡の籠】も締結できない!誰も守ってくれない!!」

「最っ高!」


 少年は顔を見合わせて、ターゲットに決まった憐れな少女を嗤った。


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