94.学年末休暇の過ごし方(帝都のデートと魔獣狩りその他)
卒業式でフェアフュアングがマスクをつけて挨拶したところ、式は一応波乱なく終わったことから、皇女殿下はフェアフュアングに離宮から出るときはマスクをつけるようにお願いした。トラブルを避けたいフェアフュアングはこれを了承した。
そこで、皇女殿下は欲が出た。
「ねえー、旦那様、私今世で、街中で旦那様とデートしたことがない。一緒に街中で買い物をしたり、カフェでお茶を飲んだりしてみたい」
「いいのか、俺と一緒だとまた、前みたいにいろんな女が絡んでくるぞ」
「そこで、旦那様がマスクをすれば、道行く人は旦那様と気づかないのではないかしら」
「でも、お前は帝国皇女、すぐにばれるぞ」
「そうね、それなら私もマスクをする。それでお相子」
「しかし、それに護衛が付くのだろう。いいのか」
「いいの」
強引にフェアフュアングを押し切った皇女殿下は、勢い豪奢な馬車で護衛を引き連れて王都の大通りへ繰り出した。
しかし、馬車には皇家の家紋があり、護衛まで引き連れている。誰が来たかはすぐわかる。当然カフェに行けば店の支配人が挨拶にやって来る。すると店の客がすべて皇女殿下たちを見る。
あまりの視線に耐えかねてフェアフュアングが
「おい、レム、完全にばれているのじゃないか」
「そんなこと言っても、せっかく来たのだからお茶の1杯だけでも飲まないと」
店に入って、お茶を注文したのだが、ここまで注目されると皇女殿下も堪えた。注文したお茶が出てくると、そそくさと会計を済ませて店を出た。店の前では支配人以下スタッフ一同最敬礼である。
「もっと人がいないような静かなところへ行かないか」
「そうね、さっきみたいにみんなの視線が集まるとさすがに堪えたわ」
ということで2人は帝都の公園に行った。公園では、家族連れが子供を遊ばせている。子供たちはボール投げをしたり、砂遊びをしたりしている。
そこにマスクをした男女が厳つい護衛を引き連れてやってきたのである。子供たちはおびえて親に抱き着いた。小さい子は泣き出した。
「おいこれ、絶対不審者に間違われているぞ」
「そうね、なんか様子がおかしいわね」
「帰るか」
「帰りますか」
早々に帝都の公園を後にして、また元の離宮に戻って来た。
離宮に戻ってきた皇女殿下は不完全燃焼である。
「どこか行きたい」
と叫んで、地団駄を踏んでいる。
そこで、また砂漠に行くことにした。前回は魔獣を避けて土魔法で作った船を走らせただけだが、今回は魔獣を狩ることにした。そうでもしないと皇女殿下の欲求不満が解消しないようである。
離宮の護衛に中で会議をするので入らないように指示した。護衛が出て行くと部屋に結界を張った。そして、前世の妻たち全員とフェアフュアングそれにタマで離宮から転移した。
すぐに景色が切り替わる。すぐに皇女殿下が回りに結界を張って、さらにその中に土魔法で城を作った。しばらくすると巨大な魔獣が押し寄せてきた。それを順番に攻撃魔法で狩っていく。
「それにしても、ここは魔獣が多いですね」
「そうだな、きりがない」
「前世の砂漠もこのような感じだったのですか」
「ここまで、魔獣が多くはなかった。だから砂漠を移動する商人もいた。それと、しばらく行けばオアシスと言って水のある所があった。そこには人も住んでいた」
「そうですか、ここはほんとに人の気配がしませんね。人はすべて魔獣に食べられてしまったのかしら」
「わからない。違うところに行ってみるか」
「この城ごと移動できますか」
「できる。おーい。これから転移で違う場所へ移動するからしばらく動かないでくれ」
妻たちとタマが魔法を控えるとフェアフュアングが「転移」と唱えた。また、視界が切り替わる。しかし砂の上である。辺りに人気配はない。しばらくするとまた魔獣がやってきた。
その後しばらく魔獣狩りをしたが、飽きたので、また離宮に帰って来た。
次の日は、今度は誰もいない北の国に転移して、地面に穴を掘って、お湯を入れて、疑似温泉にした。するとフェアフュアングが
「おい、レム、酒」
「ダメです。未成年は酒は禁止」
この繰り返しである。どうもライムは雄大な自然の中で温泉につかりながら酒を飲むのが気に入っていたようである。
このようにして、年度末休暇の間は皇女殿下たちは会議と称して部屋に引きこもったふりをして、色々なところへ転移で出かけて過ごした。




