92.学期末試験とオーロラ鑑賞
波乱の魔獣討伐実習も終わり、またいつもの日常が戻って来た。皇女殿下たちはフェアフュアングについては一種のあきらめの境地に落ちいっていた。
アリーヌがフェアフュアングと話をしようとやって来るが、あえて邪魔をしたりはしない。もうフェアフュアングに任せている。しかし、肝心のフェアフュアングはいつも寝てばかりで、会話にならない。
そのような日々が続いて期末試験になった。皇女殿下はフェアフュアングにかかわることを少し手控え、今回は勉強に専念することにした。今回は学年1位を奪還するのだと、試験勉強に勤しんでいる。
もうフェアフュアングの勉強の邪魔をするのもあきらめた。好きにさせている。
試験の結果は非常であった。フェアフュアングが学年1位、皇女殿下は2位であった。そしてマリアが3位、ヘレーネが4位、アンネリースが5位、その取り巻きのアポロニア伯爵令嬢が6位であった。
今回の試験の上位生徒は、そのまま生徒会の役員となる。そして、一応選挙もあるが、選挙は信任投票の様なもので、慣例で学年1位は生徒会長、2位は副会長となる。つまり、休暇明けの選挙でこのメンバーが信任されると、その後の引継ぎを経て、新しい生徒会の発足となる。
つまり新しい生徒会はフェアフュアングが生徒会長、皇女殿下が副会長、マリアとヘレーネさらにはアンネリースとその取り巻きのアポロニアが役員となる。
もう生徒会はフェアフュアングのハーレムである。ため息も出てこない。非常な結果であった。
つまり、秋の入学式ではフェアフュアングが新入生に対して挨拶を行う。そして、その後の生徒会ではフェアフュアングを巡って、皇女殿下たちとアンネリースたちが火花を散らすことになる。もうこれは悪夢である。
皇女殿下は考えることをやめた。もうなるようにしかならない。「たぶんフェアフュアングの側室は際限なく増えていく」そんな予感がした。
学期末試験後しばらくして、期末休暇になった。皇女殿下たちは離宮に籠って、体調不良ということで、誰にも会わなかった。本当は気持ちが落ち込んで何もする気がないのである。
「旦那様、何か気持ちが晴れることありませんか」
苦しい時のフェアフュアング頼みである。
「それじゃ、夜になったら、以前見られなかったオーロラを見に行くか」
「そうですね。光のカーテンは見てみたいですね」
ということで、夜に離宮から北の町に転移してオーロラを見に行くことになった。夜に離宮の1室で飲み物やお菓子を持ち込んでパーティーをすると称して、護衛を部屋から追い出して、部屋には結界を張って誰も入ってこられないようにした。
これで準備OK、皇女殿下たちとフェアフュアングは北の町に転移した。
夜の空に少し緑色を帯びた光のカーテンが降って来る。近くのモミの木がその光に照らし出されてシルエットのように浮かび上がる。その光カーテンは流れるように地平線のかなたまで続いている。息をのむ光景である。
「きれい。心が洗われるよう」
思わず、つぶやいてしまう。他の面々は言葉もないようである。
「どうだ、レム綺麗だろう。オーロラと言うのは神話に由来しているらしいぞ。
それから今世はどうか知らんが、前世で俺が行った時は、そこの人々は『オーロラは戦の女神が戦いで生き残る者と死ぬ者を選別して連れに来るための光だ』と言っていた。
だから、その地方の人々は『オーロラは生者の国と死者の国をつなぐ柱だ』と言っていた」
「そんなことを言っていたのですか、私も連れて行ってくれればよかったのに」
「そうだな、連れていけば一緒にオーロラを見られたし、そんな話も聞けたな」
「そうですよ、旦那様はいつも1人で行ってしまわれるのですから、私たちはいつも置いてきぼり。不満もたまりますよ」
「そうだったな、悪かった」
「今世は一緒ですよ」
「わかった、善処する」
「善処ですか。絶対とは言わないのですか」
「うーん、自信がない」
「そこは、嘘でも絶対というのですよ」
「………」
「やっぱり旦那様は旦那様ですね」
こうして、皇女殿下の気持ちも晴れたのであった。その後は嫌なことがあると、フェアフュアングに頼んでオーロラ観光に出かけるのであった。しかし、期末休暇が終わるころにはオーロラは見られなくなってきた。この世界でもオーロラを見るには見られる季節があるようである。




