91.皇女殿下のサンドバッグ
皇女殿下は皇帝に許可をもらったということで、いつものメンバーとフェアフュアングを伴って、まず騎士団を訪れた。
騎士団長が
「先日はうちの団員が失礼しました。魔獣の気配に気づかず皇女殿下を危険にさらしました。お詫び申し上げます」
「そう、悪いとは思っているのね、それじゃ日ごろの鍛錬の成果を見せてくれる」
「と言いますと、模擬戦でもするのですか」
「そうね、それもいいわね」
「それでは若い団員どうして模擬戦をさせますか」
「でもそれじゃ、なれ合いになるから、私の側近のアロイジア男爵令嬢と婚約者のフェアフュアング様、それに私も戦ってみたいわ」
「学生とですか。試合にならないと思いますが」
「そうかしら、騎士団が優秀なら先日の実習では魔獣の気配に気づくはずだけど」
「これは手厳しい。わかりました」
「おい、皇女殿下たちが、相手だ。順番に模擬戦をしろ」
「ルールは負けた方は次の選手と交代、勝った方はそのままでいいかしら」
「わかりました。そのルールで」
ということで、模擬戦が始まった。騎士団は最初は一番若い騎士がするようである。皇女殿下たちは最初はアロイジア男爵令嬢がすることになった。
騎士団長が審判をすることになった。
「始め」
の声とともに試合が始まったのであるが、開始の声を聞くアロイジアは剣を振り上げようとした相手の懐に飛び込んで、のど元に剣を突き付けた。試合は一瞬で終わった。
「そこまで、アロイジアの勝」
その後10人ほど騎士の相手をしたがすべてアロイジアの勝。
「騎士団長、もっと騎士を鍛えてくれませんか。女子学生に手も足も出ない様ではとてもこの国は守れませんわ」
「わかりました。もっと鍛えます」
「それとせっかく来たのだから、騎士団長、私と手合わせしてくれないかしら」
「皇女殿下とですか」
「そう、私と、私お宅の息子さんよりは強いですわよ」
「わかりました。怪我をさせないようにします」
「手加減は要らないわ、怪我してもフェアフュアング様が治してくれますから」
皇女殿下と騎士団長が剣を構えた。審判は副団長がすることになった。
「始め」
の声とともに試合が始まった。
騎士団長は皇女殿下に怪我をさせてはいけないと、自分から仕掛ける気はないようである。
「騎士団長は、自分からしかける気はないのですか。それならこちらから行きますわよ」
「どうぞ、皇女殿下の剣はすべて受けて立ちましょう」
「それなら、こちらから行きますわよ」
そう言って、皇女殿下は騎士団長に向って行った。そして一気に間合いを詰めると、騎士団長の剣を持つ手を叩いた。剣道の小手である。これには騎士団長もたまらず剣を落とした。そのすきに皇女殿下は騎士団長ののど元に剣を突き付けた。
「そこまで、皇女殿下の勝」
副団長の声がする。
「どうします。もう1試合しますか」
「いや言い、手が痛いので、皇女殿下の勝ちのままでいい」
「フェアフュアング様、騎士団長の手のけがを治してあげてください」
「わかった」
そう言って、フェアフュアングは騎士団長に治癒魔法をかけた。
「騎士団は団員どころか団長も鍛え直した方がいいですね。よろしくお願いしますね」
そう言って、皇女殿下たちは騎士団を後にした。
さて次は宮廷魔法士である。先ほどの騎士団同様コテンパンに、そうコテンパンにプライドをへし折ってやるのだと息巻いて行ったのだが、宮廷魔法士は騎士団と違って女性の比率が高かったのである。
皇女殿下たちと、フェアフュアングが宮廷魔法士のところへ行くと、
「キゃー」
フェアフュアングを見た女性魔法士の悲鳴がとどろき渡った。
これを聞いたフェアフュアングは皇女殿下の後ろに隠れた。慌てて、魔法士団長が皇女殿下の元に来て
「皇女殿下どうかされましたか」
「いや、様子を見に来たのだが、ここは女性の比率が高いようで、フェアフュアング様がいるとよからぬことが起きそうなので、またの機会に来る、鍛錬を怠らないように。先日の実習では私も危険な目にあったのでな」
「先日の実習の時はすいませんでした。今後はこのようなことがないように、鍛錬に励む所存です」
「わかった。鍛錬に励むように」
「はい、ありがとうございます」
魔法士団長をサンドバッグにすることはかなわなかったようである。皇女殿下のもやもやは半分しか解消されなかったのであった。




