9.第2夫人ミリーの生まれ変わり、ヘレーネ子爵令嬢
セルフホーフェン商会の親子と会ってから、しばらくして、フランツィスカから報告があった。
内容は「ズザンナさんは魚が好き」であった
「あのポンコツ。合言葉忘れたな。これじゃ知っているのか、知らないのかわからないじゃない」
それで夜彼女の部屋に転移した。そして結果は、ズザンナはミリーでないということであった。ヘレーネを調べることになった。しかし、ヘレーネとの接点がない。結局その夜はいい案が思い浮かばないので結果だけ聞いて帰って来た。
その後も、いろいろ思案したが、いい案が思い浮かばなかった。そうして時間だけがっていった。
それから半年ほどがたった。今日は10月1日、皇女殿下の誕生日である。エルネスティーネは6歳になった。朝からおめかしして、昼には誕生会が家族で行われた。午後にはフランツィスカを呼んでお茶会をした。まだ成人前ということで、王宮での誕生会はなしである。もっとも顔の痘痕があるので、晴れがましいのは苦手であった。身内でひっそりと、これは譲れない皇女殿下であった。
お茶会で皇女殿下はフランツィスカに転生者が見つからない不満をぶちまけた。
「おい、ポンコツ、あれから、ヘレーネと会う妙案は浮かんだか」
「ひどい、わたし頭は悪いけど、ポンコツじゃない」
「あれ、私、フランツィスカて言わなかった?」
「言いませんでした。ポンコツて言いました」
「ごめん。いつも頭の中ではフランツィスカのこと、ポンコツと呼んでたので口に出たみたい」
「姫様は私のこと、頭の中ではいつもポンコツて呼んでいたなんて、ひどい」
「ごめん。ごめん。これからは口に出さないようにする」
「でも頭の中ではそう呼ぶんだ。どうせ私は頭の悪いポンコツです。でも姫様の忠実な部下ですよ」
「わかっている。だから今日も貴重な時間を削ってお前を呼んだのだから。それで何かいい案はないか」
「私に頭を使う作業を期待するのはやめてください」
「そうだったな。何かいい案はないかな。いきなり子爵令嬢を呼んだりしたら、周りの貴族に感づかれてしまう」
ため息の出るだけの時間が過ぎていく。こうして皇女殿下の誕生日は過ぎていった。そう、いつもと同じ日常であった。
このころには皇女殿下の皇族としての教育も始まっていたが、前世の記憶を取り戻してからは、皇女殿下は優秀であった。魔法、護身術は言うに及ばず、転生者得点か国語も外国語も家庭教師の先生の及第点をもらっていた。また、前世には公爵家を一人で切り盛りしてきた関係上、計算も領地経営も優秀であった。
あとは、この世界の歴史と地理、それに皇族としての知識やマナーであった。これについても本人のレベルが高いのか器用にこなしていた。とにかく家庭教師の評価はすごく優秀、その言葉に尽きた。ただ、顔の痘痕を気にして人に会うのを嫌うのと、人前では、自然とうつむき加減になることであった。
そんな皇女殿下を皇帝と皇后それに2人の兄が温かく見守っていた。
そんなある日セルフホーフェン商会から連絡があった。陶磁器を販売した貴族から伝言を預かったとのことであった。セルフホーフェン商会にはあれから陶磁器を追加で作っていた。陶磁器の売り上げは順調とのことであった。多い時には1度に10個も20個も売れるそうである。
王宮にたびたび参内するのは大変とのことなので、最近はフランツィスカの伯爵邸に在庫を大量においておいて、そこへ来てもらうようにしていた。そのため、セルフホーフェン商会の扱う陶磁器は伯爵家がらみと見られているようで、他の貴族にはいい牽制になっているようである。今のところ、皇女殿下の名前を出すような事態には至っていないとのことである。
そこで、セルフホーフェン商会の会長を宮殿に呼んで、その伝言の内容を聞いた。内容は「子爵令嬢のヘレーネ様が皇女殿下にお会いしたい」とのことであった。そこで、子爵令嬢にすぐに会う手はずを整えた。場所はフランツィスカの伯爵邸、お茶会の名目で、ヘレーネ子爵令嬢を呼ぶのである。ヘレーネ子爵令嬢はセルフホーフェン商会の会長の紹介とすることにした。
お茶会当日、伯爵邸に行くと、すでにヘレーネ子爵令嬢は来ていた。
「私は、ルネスティーネ・ブルヘンハイム、帝国の第一皇女です。あなたはヘレーネ子爵令嬢、そして前世のミリーさんですよね」
「はい、私は今はヘレーネ・ギーゼンツアーです。そして、前世の記憶を持っています。前世はミリーでした」
「やっと会えた」
こう言って3人は手を取り合った。
「これから私の計画を言います。心して聞くように、そして私に協力しなさい」
(フランツィスカとヘレーネ)
「わかりました。何なりとご命じください。皇女殿下」
「私は、この痘痕なので、今世では結婚を諦めていました。しかし、前世のあのネンネリ広場の時計台の前で正午の鐘の音に合わせて誓ったことを思い出したのです。そう、あの浮気男と来世も結婚するということを。あの男も来世で私との結婚を誓ったはず。ならば、なぜ私の前に現れて私に求婚しないのか。神への誓いなのだから、誓いは履行すべき。あの浮気男、どこでフラフラしているのか。頭にくる。私がこんなに探しているというのに」
もうライムへの前世の不満全開である。これには、フランツィスカとヘレーネも引いてしまう。
皇女殿下の不満はなおも続いた。
「まず、この世界にいる、あの時時計台の前で来世のライムとの結婚を誓ったライムとその妻全員を探し出す。
そして、ライムの生まれ変わりと結婚する。私が結婚すると、あなたたちは正規な結婚は出来ないけど、ライムの愛人にはなれる。
そうしてみんなで一緒に暮らすの。大丈夫、皇帝と皇后の許可は取ったから。
そして、私たちは浮世の政は忘れて庭園でお茶を飲みながら優雅に清談に花を咲かせるの。面倒ごとはすべてライムの生まれ変わりに任せるの。
そして、ライムが逃げないように首に縄をつけて、みんなで監視するの。
これが私の計画、どう、いい計画でしょう」
皇女殿下がこの話をすると、フランツィスカとヘレーネは前世ではレムが公爵家の面倒ごとを一人でこなしてきたことを思い出した。そして、これだけ不満がたまっていたのだと改めて実感させられた。
皇女殿下は言い切ったとばかりに深く椅子にもたれて、
「死んだからそれで終わり、そんな生半可な言葉でかたずけられたら私の気持ちが収まらない」
さすがに、この言葉にはフランツィスカとヘレーネも開いた口がふさがらなかった。
こうして、2人目を見つけた訳である。皇女殿下を入れると3に人である。あと8人、先は長そうである。




