81.フェアフュアングの生まれ故郷の訪問
そのような暇な馬車の旅もようやく終わり、やっとブレンブルグ王国に入ったが、一行は王都には寄らずにそのままフェアフュアングの生まれ故郷のタールブッケン町に入った。
皇女殿下は一応ここの領主であるが、領主館には泊まるために寄っただけで何かをする気はない。領主館に勤める官吏には
「ご苦労」
と声をかけただけで、官吏が、これまでの状況を説明しようとすると
「問題ないのであれば、説明不要」
と話を聞かなかった。
これには官吏もあきれてしまった。
そして、次の日にはフェアフュアングの生まれた村に行ってしまった。
フェアフュアングの生まれた村に行くと、村長に挨拶した。
「お久しぶりです村長。村は変わったことはないですか」
「今のところ変わったことはございません。フェアフュアングはおとなしくしていますか」
「旦那様とは仲良くしています。学院を卒業したら結婚することになっています」
「それはよかった。フェアフュアングが御領主様の元から逃げ出したりしたらどうしようと思っていました」
「私たちは運命共同体、これからも仲良くしましょうね」
「はい、よろしくお願いします」
「旦那様も挨拶して」
「久しぶりです。村長様。これからも皇女殿下の元から逃げ出したりしませんから安心してください」
「よかった。お前はこの村の運命を握っているのだから、くれぐれも変な気は起こすなよ」
「はいわかっています」
「さて、次はご両親に挨拶だな」
「お前、また先ほどの会話を俺にさせるのか」
「もちろんで、ございます。旦那様の一挙手一動がこの村の運命を左右するということを、旦那様に身をもって理解してもらわないといけませんから」
「お前、前世よりさらに陰険になったな」
「何とでもおっしゃってください。私は前世で泣いた女。今世は強く生きると誓ったのです」
「そうか、前世で俺はそんなにひどい男だったか」
「そうですね、言葉では言い表せませんね。でも惚れた女の弱み。それでもやめられませんでした」
「そうか、悪いことをしたな」
「反省しているのなら、おとなしくしていてくださいね」
「そうだな、でも俺の甘美の香りはどうにもならないぜ。勝手に女を引き付ける」
「そうですね、厄介なスキルですね。これからどうなるのでしょう」
「父ちゃん母ちゃん、ただいま」
「フェアフュアングじゃないの。元気にしていた」
「うん、元気にしていた。今学院に通っている」
「そうかい、おとなしくしているのだぞ」
「わかっている」
「お義父様お義母さま、お久しぶりです。暇が出来たので、ご挨拶に寄せてもらいました」
「まあ、皇女殿下」
そう言って、土下座をしようとしたので
「頭を上げてください。私の旦那様になる人のご両親ですから、普通にしていてもらえればいいです」
「そういわれても」
「とりあえず、頭を上げて立ち上がってください」
「旦那様、これからどうします」
「そうだな、俺んち狭いけど、泊まっていく?」
「でもそれだと、ご両親が気を使うと思うから、それに私たち10人だし、泊まると御迷惑だと思うし、今日は領主館へ帰るわ。明日また迎えに来る」
「そうか、そうしてもらえると助かる」
そうやって、皇女殿下一行はフェアフュアングを両親の家に下ろすと、領主館へ帰っていった。
領主館へ戻ると、官吏が、領主が久しぶりに、町に来たというので、ご挨拶に寄せてもらいたいと言っている人が何人かきているというので、会うことにした。1人1人会っていると面倒と思って、全員一度に部屋に通してもらった。
「私は、この町の町長です。町長は、領主様から任命されることになっていますが、前回はお忙しいということで、代理の方から任命されました」
「初めまして、私はこの町の商業ギルのギルド長です」
「私は、冒険者ギルドのギルド長です。以前お会いしましたよね、覚えていらっしゃいますか」
その後も何人かに挨拶された。
「私は、この町とその近隣の村を含む地域の領主のエルネスティーネ・ブルヘンハイム男爵です。父は帝国の皇帝です。だから私は帝国では帝国皇女になります。私の婚約者はこの領地出身のフェアフュアング様です。
将来旦那様になる人の生まれたところということで、皆さんとは今後とも仲良くしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
困ったことがあれば、言ってきてください。私にできることなら力になりますので」
「これはご丁寧に、今後ともよろしくお願いします」
こうして地域の顔役とも親交を深めることが出来た。フェアフュアングを縛る意味でも有意義であったと、ほくそ笑む皇女殿下であった。
次の日フェアフュアングを村まで迎えに行って、そのまま帝都に帰って来た。帰りの馬車でも各地に転移して旅行を満喫するのであった。こうして、皇女殿下の機嫌も直ったのであった。




