69.マリア伯爵令嬢の意見書の検証
今日は第2日目の議題「綱紀粛正の通達の今後の展開について」の意見陳述人マリア伯爵令嬢の意見書の検証である。出席者は昨日と同じ、前世の妻たちとフェアフュアングとタマである。
「マリア、それではあなたの意見書を説明して」
「それでは説明します。私たちが転生したのは神がいたずら好きという前提で、綱紀の粛正には今後神にもかかわってもうことにしました。そこで、次のような政策を採用すべきと愚考します。
1.結婚した貴族は最低1年に一度教会で、結婚後の現在の状態を神に報告する。
2.題点があるようだったら、神に許しを請う。
3.祈る内容は次の内容とする。あらかじめこの内容を記載した用紙を夫婦で声を出して唱える。教会の司祭は夫婦の祈りに立ち会い祈りの内容を確認する。
1).結婚式で誓った言葉、私は妻(夫)を今も愛しています。
2).私は妻と子供を愛しています。そして、良き夫として家のため、領地と領民のため最善を尽くしています。
3)仕事は妻と分担して適正に処理しています。決して妻だけに押し付けるようなことはしていません。
4.正しい内容の祈りを教会でささげた場合、司祭から証明書をもらう。
5.その証明書を帝国の法務局に年1回提出する。それを提出しない場合あるいはその証明書を法務局の人間が鑑定して、祈りの内容等に偽りが発覚した場合は、通達に違反しているとして、反則金を課す。そして、違反した貴族は貴族名を公表する。
これが私の意見書の骨子です」
「これについて、何は意見はありますか」
「祈りを声に出して唱えれば、嘘は言えないわね」
「よく考えたわね」
「はい、帝国の法務局の人間がいくら優秀でも、偽りの祈りまでわからないと思ったから」
「でも、祈りを声に出して唱えるのを貴族や教会の司祭が納得するかしら」
「今回の通達は教会も全面的に賛成しているわけだから、これぐらいは許してもらえると思いました」
「確かにそうね、教会関係者はこの通達は出すのが遅すぎたと言っているくらいだから、多分許してもらえるわよね」
「俺に言われても、確かに祈るだけなら嘘も言えるけど、声に出せば嘘は言えないものな。うまく考えたな」
「ほかに何か意見はありますか」
「なければ、今日はここまで。もしあとで、何か気がついたら、その時は再度検証会を開催します。それでは解散」
ということで、皇女殿下たちの検証会は終わった。
そのころ帝国各地で、同様の検証会が開催されていた。とにかくこの通達はそれだけ影響が大きかったのである。浮気を自由に認めるか認めないか。今帝国を2分した論争が展開されていた。このような議論で帝国を2分するというのはある意味帝国は平和である。
とにかく帝国は強い。その軍事力にしても、経済力にしても。そして皇女殿下の臭い対策の成果か最近は帝国中が清潔になって、疫病の発生も少なくなった。また、農業生産力も安定しているのである。そして皇帝は有能で、うまく貴族のかじ取りをしているため、対立点が浮気問題以外ないという実情もあるのである。
さて、ここまで皇女殿下の動きを見てきたが、ここで最大のライバル、アンネリース・ドルムント侯爵令嬢の動きを追ってみたいと思います。
アンネリースも意見陳述人に選ばれた。彼女は人間優秀論、これは彼女が考えた理論である。この理論は優秀な人間は優秀な子供を残すことが出来る。だから多くの妻をめとって優秀な子供をたくさん産めば帝国が繁栄するという理論である。
この理論に従うと無能な人間はたとえ貴族であっても妻を複数持てなくなるため、浮気肯定派貴族には不満であったが、とにかく彼女は頭いい、浮気肯定派貴族が議論を挑んでも、すぐに論破されてしまうため、彼女の意見に従うしかなったのである。
あと、浮気否定派貴族夫人の意見書であるが、これはもう日ごろの夫の浮気に対する不平不満を声高々につづったもので、意見と言うよりは叫びに近い物であった。皇帝の審査会でも、この意見は却下したかったが、これを却下すると、彼女たちが宮殿に押しかけてくるだろうという判断のもと、選定せざるを得なかったのである。
中立派の意見書、これは割とまともな事が書かれていた。浮気肯定派貴族にも浮気否定派貴族夫人にも配慮されていて家制度の存続と帝国の結束を守る。そのために取るべき政策のようなことが書かれていた。
最後に教会関係者の意見書。これは神を前面に押し出した、神は神聖である。そして婚約も結婚も神との契約であるから、これは絶対にしてかつ神聖なものである。これに反するということは神への冒涜であるという物で、ここまでの精神論を述べられると少し引いてしまう物であった。
このようにして、各者各様な意見書の検証が、帝国各地で行われているのであった。




