66.皇女殿下たちの意見書のその後
公聴会に提出するヘレーネ子爵令嬢とマリア伯爵令嬢の骨子も決まり、その後、最終的に提出する際には再度全員で協議し、その後、意見書の要約書を作成し、法務局に提出した。
一応皇女殿下は皇帝に
「公聴会に私は意見の発言者になれなかったので、ヘレーネ子爵令嬢とマリア伯爵令嬢に私たちの意見を代わりに発言してもらうことにしたから、意見陳述人の選考に当たっては配慮してよね」
まるっきり、えこひいきである。しかし、皇女殿下も自分の将来がかかっていると思うと後に引けない。
少し魔力を込めたら、皇帝が青くなった。
「やめろ、魔力を込めるのは。わかった。内容は十分吟味するよう法務局に言っておく」
「採用するとは言ってくれないのですね」
「1次選考は法務局だ、俺の手元に来る時点で落ちていたら対応できない」
「そうですか、それでは、法務局にも一度ご挨拶に行ってきます」
「待て、法務局で魔力を解放するのはいかんぞ」
「しませんよ。そんなこと。ただちょっと、御挨拶に行くだけです」
「ほんとうだろうな」
「はい、私は一応帝宮では、か弱い少女で通っていますから。愁いを込めた目で見つめるだけです」
「そうか、それならいいが」
皇帝の許可をもらうと、その足で皇女殿下は法務局に行った。そして局長に
「私も公聴会で意見が言いたいと言ったらお父様が皇族が述べたのでは他の者が委縮してしまうから、控えるように言われまして、それでヘレーネ子爵令嬢とマリア伯爵令嬢に意見陳述人になってもらうことにしました。意見書はすでに提出してあると思うのでよろしくお願いします」
「そうですか、皇女殿下の側近の方々も意見書を提出したのですか。こんどの公聴会は盛り上がることでしょうな。ヘレーネ子爵令嬢とマリア伯爵令嬢の意見書は私も読ましてもらいます。ただ、まだすべての意見書が出そろっていないので、どの方の意見書を皇帝の最終選考に挙げるかはここでは申し上げることは出来ません」
「ええ、わかっています。私たちの意見書よりもすぐれたものが提出された場合は、その方々を押しのけて採用されるとは思っていません。厳正な選考をお願いします。もし、浮気肯定派貴族や浮気否定派貴族夫人から圧力がかかるようでしたら、私に言ってもらえれば対応しますので、選考はあくまで内容重視ということでお願いします」
「ありがたきお言葉、感謝します。もし、他から圧力がかかるようでしたら、皇女殿下のお力を拝借します」
「その時は遠慮なく言ってください。父に直に伝えますから」
法務局の局長が割と公平な人でよかったと思う皇女殿下であった。
その後、法務局には多くの意見書が提出された。通常の業務に加えて、追加の仕事である。法務局の職員は連日残業に追われた。その中で問題となったのが、上位貴族からの意見書である。下級貴族からの意見書はいいと思えば採用、悪いと思えは不採用とすればいいが、上位貴族は不採用にしたら、後で文句を言われると対応に困る。すると、部下は判断をやめて、上位貴族からの意見書はすべて、局長のところまで来てしまう。局長は、もう法務局に泊まり込みとなった。
そのような激務の中、ヘレーネ子爵令嬢とマリア伯爵令嬢の意見書が上がってきた。皇女殿下の手前内容を見ないわけにもいかず、内容を確認した。する、割と吟味してあるようで、正直言って、今まで上がってきた意見書の中では上位にランクインされると思った。
まず、ヘレーネ子爵令嬢の意見書である。これは今回の通達の細目を決めるためのものである、そのため、おおざっぱでは困るのである。その点ヘレーネ子爵令嬢の意見書は隙間のない文章であった。この場合の隙間とは、内容的なことを言っているのであって、空白の多いという意味ではない。つまり、この場合どうなるのだという場合について、その対応が述べられているという意味である。
次にマリア伯爵令嬢の意見書であるが、これは今までと全く違った観点から述べられており、正直言って、こんな考え方もあるのかと思ったぐらいである。神からの啓示、教会での懺悔、これはぜひ採用だと思った。
局長は、ヘレーネ子爵令嬢にしてもマリア伯爵令嬢にしても、皇女殿下はいい側近を抱えたと思った。
このようにして、ヘレーネ子爵令嬢とマリア伯爵令嬢の意見書は最上級の評価が添えられて、皇帝と宰相が主催する選考会に上申されたのであった。




