64.公聴会に提出する意見書の検討(第1日目午後の案件)その2
結婚倦怠期をどうするか。難しい難問に出くわして、解決策が見つからない皇女殿下たちは恥をしのんで、フェアフュアングに相談することにした。
フェアフュアングの前世のライムは優秀なのである。やろうとすればすべて器用にこなす。そうやろうとすればの話である。しかし、彼は基本怠惰である。ほとんどのことに興味を示さない。それで何もしないのである。何もしないのであって、出来ないのではないのである。ただ、しないだけ。それが皇女殿下をはじめとする前世の妻たちの共通の認識である。
フェアフュアングに相談すると、
「そんなの浮気を認めればいいじゃない。もう倦怠期になって、男女お互い、そういう行為をする気もないし、子供が何人もいたら、その必要もないのじゃない。嫌なことはする必要がない」
「でもそれじゃ、勝手に浮気してもいいってこと」
「そうは言っていない。夫婦が点でバラバラなことをしていたら、家が崩壊してしまう。そこはルールにのっといてというか、決まり事をきめてそこからは逸脱しない。浮気は浮気として管理される。浮気が本気となったら契約違反として処罰の対象とすべきだと思う。今回の通達には側室の取り方も書いてあった訳だから、その場合は第1夫人の了解の基、側室を取るべきだと思う」
その後、皇女殿下たちで再度協議したが、
「不満は残るけど、反対派の質問に耐えるにはそれしかないか」
「ここは家の存続を前面に押し出して、第2夫人をとる方向で意見書を整理するしかないわね」
「それではそうします」
「そうすると、結婚後の細目も家の存続で、第1夫人に管理される方向で再度整理して」
「わかりました」
その後、再度整理した意見書で検討会が行われた。
「それではヘレーネ結婚後の細目を続けてください」
「わかりました。結婚後は家の存続を前面に押し出してして内容を修正しました。まず、結婚後は夫婦は同居を基本とする。理由なき別居は、婚姻の契約違反とみなし罰則規定を設ける。そして、家の存続に向けて、家の仕事を共同で行う。一方に押し付けるような場合は契約違反として罰則対象とする。将来離婚する場合は、それまでの貢献度に応じて、十分な金銭補償をする。もし、その補償に不満のある場合は帝国の法務局に申し出て裁定を受けることが出来る。若し、家の当主が、家の仕事を第1夫人に押し付けて、家の仕事をしない場合は、その家の当主の交代を帝国の法務局に申請できる。この申請がなされた場合は、帝国の法務局はこれを審査し、内容が妥当と判断された場合は家の当主の交代を命令できる」
「ちょっと、まって、貴族家が法衣貴族だと、管轄権は皇帝にあるけど、地方領主の場合は、皇帝と地方領主の関係は皇帝から封土をもらった見返りに忠誠を尽くすという契約よ。領主が皇帝に忠誠を尽くす限り領主の変更は出来ないわ」
「そうか。そうですね。愛人にうつつを抜かす当主を何とかしたいと思ったのですが。難しいですね」
「そうよ、前世でもライムがあんなに遊んでいても、公爵家の当主だったものね」
「そうなると、第1夫人への金銭的補償しかないですね」
「そうなるわね」
「その場合第1夫人の申請で離婚が出来るというのはどうですか」
「それは問題ないと思う。でもそうなると当主が今度は愛人を第1夫人にするのじゃない」
「それもじゃくですね」
「しかし、家の存続と言う点では、丸く収まるのじゃない」
「しかし、納得がいかない」
「それじゃ、仕事をしない当主には賃金を払わないというのはどう」
「そうですね、確かに仕事をしないのだからお金を払わないのはありですね」
「家を前面に押し出している以上、その家の利益にならないことにはお金を支出する必要はありませんものね」
「そうですね、それでは、そういう内容で意見書をまとめます」
そのようにして、公聴会1日目の議題に対する意見書の骨子は決まった。もう疲れてあとはヘレーネに丸投げする皇女殿下であった。




