59.学院生活(授業初日)
教室に行くと、多くの女学生がフェアフュアングの入室を待ちわびているようで、視線が集まる。認識疎外の魔道具はあまり効いていないようである。昨日と同じようにフェアフュアングを囲うように4人で座る。履修届をどうするか、必須科目については変えようがない。問題は選択科目であるが、女子があまり受講しないような科目を中心に受講することにした。
と言っても、選択肢が多いわけではない。せいぜいが薬学をやめて乗馬を受講するぐらいである。ここで、履修届を書くと周りに知られてしまうので、履修届は離宮に帰ってから記入して、提出は最後の日に提出する予定である。今は他の女学生に何を受講するか悟られないようにするだけである。
1限目の授業が始まった。1限目の授業は国語である。隣のフェアフュアングは何をしているのかなと思ってみると寝ている。前世でもライムは怠惰だったが、この性格はフェアフュアングにも受け継がれているようである。たぶん「テスト前にノート見せてと言うのだろう」と思う。フェアフュアングをじっと見ていたら、
「皇女殿下は、そんなに婚約者のことが気になりますか」
教師に言われてしまった。
「すいません授業に集中します」
「そうしてください」
次の授業の算数もフェアフュアングは寝ていた。すると算数の教師は
「フェアフュアングさん、黒板の問題の答えを言ってください」
いきなりあててきた。
すると、フェアフュアングは黒板を見ただけで、
「答えは、金貨3枚と銀貨2枚です」
即答である。
すると教師は
「眠っていたわけではないのですね」
前世でもライムは数学が得意だった。学院の教師も知らないことでも知っていた。これぐらいの問題寝てても余裕で解けるようである。ちなみに皇女殿下もさすがに2度目ともなると余裕で解ける。しばらくするとフェアフュアングはまた寝てしまった。しかし教師はもうあてることはしなかった。
午前中の授業が終わって、食堂に行った。行くと、BクラスとCクラスの前世の妻たちが席を取っていてくれていたので、そこに座った。当然フェアフュアングは中央で、周りの視線を遮るように前世の妻たちが座っている。
フェアフュアングは何か文句を言うかなと思っているのだが、今のところ無言である。そこで、
「旦那様、周りの視線から隔離しているのですが、何か問題がありますか」
と聞いてみた。すると、
「別にいいぜ、俺は目立ちたい訳じゃない。好きにしろ」
どうでもいいようである。
午後の授業は剣術実技である。当然皇女殿下たちがフェアフュアングを隔離している。すると、騎士団長の息子アーベルがやってきて、
「皇女殿下の婚約者様、女子と手合わせでは、物足らないでしょうから私が相手しましょう」
要らぬちょっかいを出してきた。すると、フェアフュアングが、
「いいのか。俺強いぞ」
「強いと言っても、元平民、たかが知れている」
するとフェアフュアングが、皇女殿下を見て
「少し、本気になってもいいのか。手加減はする。怪我はさせない」
すると、アーベルは真っ赤になって、
「俺に手加減とは、むしろ手加減するのはこちらだ」
なんか険悪な雰囲気である。皇女殿下は教師に向かって
「いいのですか。フェアフュアング様はアーベルに怪我をさせないと言っているので、このまま試合をやらせてもいいですか」
「フェアフュアングはそんなに強いのか」
「たぶん、この中では一番強いと思います」
「わかった、私が審判をする。両者構えて、始め」
結果は瞬殺であった。
前世でもライムは剣術が得意だった。というか、何事も器用にこなしていた。たぶんあれは転生者得点だったのだと思う。それに今回も転生して、その特典がさらにグレードアップしているのである。たぶんアーベルでは勝てない。結果は予想通りである。
皇女殿下が
「アーベル、もう少し精進したら、たぶんあなたはアロイジア男爵令嬢にも勝てないと思うわよ」
「そんなことはない、俺が女などに負けるわけがない」
「そう、それなら私とやってみる」
そう言ってアロイジア男爵令嬢が前に出てきた。
今度も教師が審判をすることになった。
「両者かまえ、始め」
掛け声とともに、両者は木剣を交えた。アロイジア男爵令嬢が少し押しているようである。アロイジア男爵令嬢のスキルは剣術、涼しい顔をしている。余裕しゃくしゃくである。対してアーベルは少し焦っているように見える。
皇女殿下が
「アロイジア、手加減は要らないわ、やっちゃって」
そう言うとアロイジア男爵令嬢は急に木剣の勢いを増して、振りぬいた。すると、アーベルの木剣が飛んでいった。
「勝者アロイジア」
審判の声がした。
こうして、授業初日は終わった。




