57.学院入学(教室にて)
入学式終了後は、各クラスに行って、今日はガイダンスが行われる。クラスの担任は例年だと女性教師がなるのであるが、そこは無理やり男性教師をつけるよう圧力をかけた。学院側もそれに答えて男性教師をつけた。
皇女殿下が教室に入って辺りを見渡すと、例年だと男女半々、Aクラスだとむしろ男子の方が多いのであるが、今年は何故か女子の比率が高い。その中にアンネリース侯爵令嬢もいる。どうもフェアフュアングに疫病でできた痘痕を治療してもらった令嬢がかなりの数で含まれているようである。「これは前途多難だ」と思う皇女殿下であった。
Aクラスに入ったのは、皇女殿下、マリア伯爵令嬢、ヘレーネ子爵令嬢、アロイジア男爵令嬢の4人である。皇女殿下はフェアフュアングを一番後ろの席に座らせると、前世の妻たちとともに、その周りを囲うように座った。そのようにして、フェアフュアングをクラスの女生徒から隔離するようにしているのであるが、何分4人では心もとない。フェアフュアングの姿を一目見ようと、クラスの女生徒が虎視眈々と狙っている。
フェアフュアングであるが、先ほどの入学式もそうだったが、ここでも自分から動くことはないようで、普通に教室に入って、皇女殿下が指定する席に座った。そしてただぼんやりと前を見ている。何もしないのがむしろ不気味なくらいである。
しばらくすると、担任の男性教師が入ってきた。
「今日から、お前たちの担任になるハンスだ。伯爵家の三男だ。妻と子供が2人いる。担当は剣術実技だ。俺は強い男や女が好きだ。細かいことは気にしないたちだ。
それから言っておくが、学院では貴族も平民も平等だ。まあ、外に出れば知らんがな。しかし、校舎の中では、貴族風を吹かせることは禁止だ。
同じクラスのなったのだから、これからは仲良くするように。最初だから前から順番に自己紹介をしろ」
こうして、自己紹介が始まった。
皇女殿下の番になった。
「私はエルネスティーネ・ブルヘンハイム、帝国の第一皇女です。魔法スキルは土魔法ですが、それ以外にも色々使えます。小さい時疫病を患って顔に痘痕が出来たのですが、隣にいるフェアフュアング様に直してもらいました。フェアフュアング様は私の婚約者です。学院を卒業したら結婚することになっています」
フェアフュアングの番になった。
すると、教室のあちこちから悲鳴が聞こえる。認識疎外の魔道具が全然効いていない。担任が、
「静かにしろ」
と言っても納まる様子がない。すると、フェアフュアングは悲鳴を無視して、自己紹介を始めた。すると、急に悲鳴が納まった。
「俺はフェアフュアング、生まれはブレンブルグ王国です。皇女殿下の痘痕を治したことの功績を認められて伯爵位を授かりました。魔法スキルは生活魔法ですが、魔法全般が使えます。皇女殿下は私の婚約者です」
何とも無難な自己紹介である。どんな自己紹介をするか戦々恐々としていた皇女殿下たちは拍子抜けしてしまった。
その後、アンネリース侯爵令嬢の番になった。
「私はアンネリース・ドルムント、ドルムント侯爵家の長女です。趣味は小説を書くことです。私も小さい時疫病で顔に痘痕が出来たのですがフェアフュアング様に治療してもらって、きれいな顔に戻ることが出来ました。私は、能力のある男性は複数の妻を持ってもいいと思っています」
すると、教室のあちこちから
「そうだ。フェアフュアング様の独り占めはよくない」
という声が聞こえる。
学院初日から、爆弾発言が飛び出した。
「初日ぐらいおとなしくしていれば」
という皇女殿下たちの思いとは裏腹に、
「初日だからガツンと言うべき」
と言う、反皇女殿下派とも言うべき女性との確執が始まったのである。
これに驚いたのは担任である。校長からは
「今回のAクラスには、皇女殿下とその婚約者がいるので、取り扱いには注意するように」
とは言われていたが、
「その婚約者の狙う女生徒が多数いる」
とは夢にも思っていなかったのである。
とりあえず
「静粛に。まだ、自己紹介をしていない生徒もいるので、静かにするように」
こういうのが関の山であった。
一通り自己紹介が済んで、
「学院は単位制なので、履修する学科についてはよく考えて提出するように。今日はこれで解散」
後で、校長に直談判して、
「問題が生じた場合はすべて校長が対応するように言わなければならない」
と思った。
そうしないと俺がもたない。不安がいっぱいの担任であった。




