54.猫の騒動
アブノーマル男の騒動が納まって離宮にはまた平穏な日々が訪れた。そんな時、フランツィスカ伯爵令嬢が実家へ帰った際に猫を拾ってきた。
「皇女殿下ただいま戻りました」
「成長したわね。フランツィスカでもそんな挨拶ができるようになったんですね」
「私でも、挨拶ぐらいできますよ。それぐらいしないと、私の場合、なんであんなポンコツがと言われているんですから」
「そうね、でも当たっているのじゃない」
「そんな、皇女殿下、私はあなたの忠実なしもべですよ」
「わかっているわよ。あなたの場合、難しいことは期待しないけど、家柄だけは期待しているから」
「ありがたきお言葉、光栄です」
「ところで、その猫どうしたの」
「道端でうずくまっていたので、拾って来たんです」
「へー。フランツィスカに捕まるような間抜けな猫もいたんだ」
「そんな言い方しないでくださいよ」
「ごめん。それで、その猫どうするの」
「ここで飼ってはいけませんか。なんか前世のタマを思い出して」
「そうね、何となく似ているわね。フランツィスカがちゃんと世話するなら飼ってもいいわよ」
「ありがとうございます。よかったねタマちゃん。これからここがあなたのお家よ」
そう言って、フランツィスカはその猫を連れて行った。
その夜、宮殿が寝静まったころ、フェアフュアングは異様な気配で目が覚めた。すると、そこには裸の2歳くらいの幼女がいた。しかし、幼女というには少し変である。衣服を着ていないこともさることながら、目が金色に光っている。髪も逆立っている。
「お久しぶりです。ライム様、お慕いしておりました」
「誰だ」
「前世で、公爵邸で飼われていたタマです」
「タマって、猫じゃなかったのか」
「はい、猫でした」
「なんで、猫が俺を慕うのだ。俺は人間だぞ」
「それを言われても困ります。私も最初は普通の猫だったのですが、長く生きていたら、何となく人間のことが分かるようになって、そして気が付いたら旦那様を好きになっていたのです」
「そうか、何というか、猫にも好かれていたのか」
「そうです。旦那様は素敵な人でしたから」
「そのタマがどうしてここにいるのだ」
「今日、道端で倒れていたら、フランツィスカ様、多分前世のセリーナ様に拾われて、ここに連れてきてもらいました。そして、皇女殿下、多分前世のレム様が『ここで飼ってもいい』とおっしゃられたので、ここで飼われることになりました」
「お前は、俺のことやレムのことが分かるのか」
「はい、何というか魂が同じというか、自分でもよくわかりませんが、心で感じることが出来ます」
「そうか、それで、どうして猫が人間の姿になっているのだ」
「私は死ぬとき、来世は人間に生まれ変わりたい。そして、来世はライム様と添い遂げたいと願いました。そして気が付いたらまた猫に生まれ変わっていました。前世の記憶を取り戻したときはすごくショックでした。もう動けないくらいに。それで道端にうずくまっていたらフランツィスカ様が私を拾ってくれました。
『また猫になってしまったのは残念だけど、このままおとなしくしていれば、愛しのライム様にまた会える』と思い、おとなしくしていたのですが、夜中に目が覚めたらこの姿になっていたのです。自分でも何故この姿になれたのかよくわかりません。きっと神様が『ライム様と添い遂げたい』という私の願いをかなえてくれたのだと思います。
ですから私を妻にしてください。もちろんレム様や他の妻たちの方々の邪魔をするつもりはありません。11番目の妻としてもらえれば十分です」
「妻にするかどうかは、明日レムたちに聞いてみる。それにしても猫を妻にするというのは」
「いやですか」
「そうじゃなくて、気持ちが付いて行かないというか」
「もし、私を邪険にするなら化けて出ますよ」
「もう化けて出ているだろう」
「これは化けて出たのではありません」
「わかった、わかった。そんなに近づくな」
「冷たい。前世はよく一緒に添い寝してくれたのに」
「添い寝したのではなく、お前が俺の布団に潜り込んできたのだろう」
「よく憶えていらっしゃる。そんな細かいことはどうでもいいのに。いつまた、この姿になれるかわからないので、今日はこのまま添い寝させてください。そうしないと毎晩化けて出ますよ」
「心臓に悪いことを言うなよ。わかった今日だけだぞ」
「ありがとうございます。好きですライム様」
そう言って、タマはフェアフュアングの布団に潜り込んだ。
「うれしい」
「なあ、お前を鑑定してみてもいいか」
「お好きにどうぞ。私はライム様の物ですから」
フェアフュアングがタマを鑑定してみると、
「タマ:タマの生まれ変わり、種族:猫又、スキル:生活魔法、言語理解、隠密、変化」
と出ている。
「あかん、こいつ完全に化け猫だ」
思わずつぶやいてしまった。すると
「ひどい、私を化け猫だなんて」
「でも鑑定の結果は猫又と出ていたぞ。それに魔法が使えるみたいだ、生活魔法と言語理解それに隠密と変化のスキルがある。自由に変化できるみたいだ」
「そうですか。それなら明日試してみますね。今は至福の時間。ライム様と一緒にいたい」
そう言って、タマは寝てしまった。フェアフュアングもタマの背中をなでてしばらくして眠りについた。




