53.そのけのある男の騒動
フェアフュアングは宮殿の離宮に隔離されている。そして、彼に接触を試みる女性はことごとく排除されている。そう女性はである。しかし、男性と動物は接触を許されている。警備の衛兵は当然男性である。最初この衛兵については近衛師団の中から、師団長の推薦してきた者をあてた。しかし、これが間違いであった。普通の男性なら問題ないのである。そうノーマルなら、しかし、男性の中にはそのけのある人間も多少含まれているのである。警備人は10人派遣されてきた。その中に1人おかしいのがいた。名前はスチフール、伯爵家の三男である。
スチフールはフェアフュアングを一目見た時、胸がときめいた。そして、寝ても覚めても彼のことが忘れられなくなった。そして、その思いを打ち明けた。
「フェアフュアング様、お慕いしております」
これを聞いたフェアフュアングが震え上がった。彼は至ってノーマルだったのである。気が動転して、余裕がなかったため、そのまま転移した。とにかく、訳も分からずただ転移した。
離宮からフェアフュアングがいなくなったという情報はすぐに皇女殿下の基に届いた。フェアフュアングのいた場所に駆けつけると、なぜかおかしな女がいる。そう最初は女だと思ったのである。しかし、よく見ると女にしてはおかしい、のどぼとけがある。声も低い。
護衛の者たちが集まってくると、観念したのか女が
「私はスチフール、この離宮の護衛に近衛師団から派遣されてきた者です。フェアフュアングを一目見て好きになってしまいました。そして思いを打ち明けたのですが、急にいなくなってしまいました」
この回答に皇女殿下は頭をかかえた。まさか、フェアフュアングの甘美の香りが男までも惑わすとは思っていなかったからである。
この不始末は近衛師団長に丸投げすることにした。とにかく早くフェアフュアングを探さないといけない。すぐに皇女殿下はフェアフュアングの実家に転移した。そして、両親に今回のことを伝えた。
「今回はこちらの不手際なので、税金10倍の話は関係ない」
と伝えた。
そして、一緒にフェアフュアングを探してもらった。
母親の話だと
「フェアフュアングは嫌なことがあると、よく離れの小屋の隅で泣いていた」
というので、そこへ行ってみた。
すると壁にもたれているフェアフュアングを見つけた。
「旦那様、レムです。今回はすいませんでした。不届き者は処分します。今後このようなことは起きないようにします」
「本当だろうな。俺はその手の趣味はない。至ってノーマルだ」
「わかっています。レムは旦那様の妻ですから。前世でも旦那様は男を連れてきたことはありませんでしたから」
「そうだな」
「………」
「どうしたんだ」
「いや旦那様も怖いものがあるのだなと思って」
「当たり前だ。俺が強いのは女だけだ。ドラゴンや魔獣が倒せるわけじゃないぞ。俺は勇者じゃないんだからな」
「そうですね。でも私にとっては勇者ですよ。かけがえのない」
「そうか。やけに今日はしおらしいな。どうしたんだ」
「こういうときもありますよ。私も女ですから」
「そうか」
「前世で、旦那様から正妻にすると言われたときはうれしかったです。あの時どうして私を選んだのですか」
「あの時か、もう忘れた」
「旦那様はいつもそうやって、本心を言ってくれないのですね」
「そうだな、俺はずるい男さ。いやか」
「いやじゃないけど、言ってほしい言葉もあります」
「うわべだけの言葉でもか」
「そうですね、うわべだけの言葉は嫌ですね」
「だろう。だから俺は本心は言わない」
「そうですね、それが旦那様ですね」
「それで、これからどうする」
「そうですね。今日は旦那様の家に泊めてもらいますか」
「いいのか。帝都に帰らなくても」
「1日ぐらいいいでしょう。旦那様もせっかく実家に帰って来たのだから。両親に顔を見せるのもいいでしょう」
次の日皇女殿下とフェアフュアングは帝都に帰った。離宮に戻って、近衛師団長よりその後の顛末を聞いた。スチフールは除隊し実家で謹慎処分とする。今後このようなことが起きないように近衛師団についてはアブノーマルな者がいないかを調査し、いた場合は除隊させることで話がまとまった。そして補充の護衛が配属されてきた。
そしていつもの日常が戻ってきた。




