48.フェアフュアングの家族との協議
馬車の対策会議では、結局フェアフュアングの浮気は容認する。ただし、無制限の浮気は容認しない。何らかの形で管理する。一番理想なのは、新たに女を妻にできるのは、皇女殿下たち前世の妻たちすべてが同意した場合のみ可とするものだが、これはフェアフュアングが認めないだろうというのが、みんなの一致した意見であった。どこまで、フェアフュアングの家族と生まれた村を人質にできるかは交渉次第となった。これが馬車の中での対策会議の結論である。結局1か月の対策会議はあまり実りのないものであった。
そして、ついにフェアフュアングの生まれた村に着いた。領主の仕事はどうしたって、そんなのもの連れてきた文官や武官に丸投げした。適当に前任者と引継ぎして作業しろと命じた。私は、「これから行く村で私の一生がかかっている」と言って困惑する文官や武官をタールブッケン町に置いてきた。
皇女殿下一行は、村に到着すると、まず村長のところに行った。
「私は、新しくこの村の領主になったエルネスティーネ・ブルヘンハイム男爵である。私の領地はタールブッケン町とその近隣の村で、この村も私の領地に含まれる。私の命令は絶対である。皆は私の命令に従うように。私はこの村の出身であるフェアフュアングとの結婚を望んでいる。フェアフュアングは私と同じ10歳なので、結婚には親の同意がいる。私の両親の同意は取り付けた。あとはフェアフュアングとその両親の同意が必要である。もし、フェアフュアングとその両親が私との結婚に同意しなかったり、フェアフュアングが逃げたりした場合はこの村の税金を今の10倍にする」
これを聞いて、村長は震えあがった。いままで、フェアフュアングがらみで村に娘が来ることは度々あった。それもかなりおかしな女もやってきたが、税金を10倍にすると言った女は初めてである。
「フェアフュアングは今ここにいませんが、すぐに、フェアフュアングの家族を呼んできます」
しばらくすると、フェアフュアングの両親がやって来た。あらかじめ呼びにいった人に話を聞いていたようで、両親は皇女殿下の前に来るとすぐに土下座した。
「御領主様、私たちだけでしたらどんなことでもします。フェアフュアングが何をしでかしたのかは知りませんが、どうか、この村に危害を加えないようにお願いします」
「何、私も鬼ではない。この婚姻届けにサインして、フェアフュアングに私との結婚を承諾させる。そして、私から逃げ出さないようにしてもらえればよい。あとは、フェアフュアングが浮気をしないように監視してもらえればよい。浮気の程度によっては、また村に新たな税をかけるかもしれないからな」
「わかりました。フェアフュアングには御領主様と結婚するよう言い聞かせます。そして逃げ出さないようにも言います。しかし、浮気となると、フェアフュアングだけでは、相手の女から言い寄ってくる場合もありますので」
「出来ぬというか、それならこの村の税金はどうしようかな」
「わかりました。浮気しないように言い聞かせます。どうかご慈悲を」
「今の言葉、忘れぬようにな」
そして、両親が婚姻届けのサインしようとしたが、両親は文字が書けないとのことで、村長がサインして両親が拇印を押すことになった。村長が婚姻届けの皇女殿下の両親の欄を見て
「ブルヘンハイム帝国皇帝、もしかして御領主様は帝国の皇女殿下ですか」
「そうだが、何か」
「ご無礼をお許しください。どうか、命だけはお助けを」
「なにも命はとらぬ。この村は私の夫になる人の生まれた村だからな。ご両親を手厚く遇するぞ。フェアフュアングがおとなしくしていればの話だがな」
「それはもう、フェアフュアングにも言い聞かせます。村中で監視します」
「よかろう、今日はいい日であった」
こうして、皇女殿下のフェアフュアングの家族と生まれた村を人質にする作戦は幕を切って落とされたのであった。あとはフェアフュアングがどう動くか。最大の難関が立ちはだかっている。




