49.フェアフュアングとの交渉
善は急げ、その足で、皇女殿下とその一行はフェアフュアングの家族と村長を連れて、タールブッケン町の冒険者ギルドに行った。そこで、フェアフュアングがクエストから戻ってくるのを待った。
いかにも貴族と思われる一団が、村人を拘束してギルドにやってきたので、場内は騒然とした。ギルドマスターが
「どうかされました。失礼ですが。どちら様ですか」
「私は新しくこの町の領主になったエルネスティーネ・ブルヘンハイム男爵である。フェアフュアングに用があるので、ここで待たしてもらう。ギルドには迷惑はかけない」
「これは失礼しました。私はこの町のギルドを預かるギルドマスターのアヒムです。今後ともよろしくお願いします。フェアフュアングが何か問題でも起こしたのですか」
「彼が問題を起こしたわけではない。私が彼に結婚を申し込みに来たのだ」
これを聞いて、アヒムはまた、とんでもない大物を釣り上げたものだと思った。
「それではごゆっくり」
と言ってアヒムは戻っていった。しかし、部屋には戻らずに事の成り行きを見守ることにした。
夕方になると、冒険者が戻ってきたが、場内の異常な雰囲気に受付で結果報告と報酬の受け渡しが終わっても誰も帰ろうとしない。かたずをのんで事の成り行きを見守っている。こんな見世物、滅多にない。そのうちにフェアフュアングが戻ってきた。そう多数の女性冒険者を引き連れてである。
これを見た皇女殿下は前に出た。前世の妻たちも皇女殿下の後ろに続いた。皇女殿下は周りに結界を張って音を遮断した。そして
「押しさしぶりです。ライム様。お慕いしておりました。あのネンネリ広場の時計台の前で夫婦の誓いをしたこと。よもや忘れた訳ではありませんよね」
「うー。誰だ、お前、レムか」
「そうです。レムです」
「すると、お前の後ろにいるのは、ミリー、セリーナ、オリーヌあと誰だっけ」
「旦那様は妻の名前もお忘れですか。こちらは、イルメラ、アデナ、カーチャ、カロリーネ、アニカ、リンダです」
「その前世の妻たちが俺に何用だ」
「前世の誓いを果たすために来ました。旦那様も、前世の記憶が戻っているのなら、なぜ私たちに求婚してこないのですか」
「俺か、俺は前世でお前たちと結婚したいとは祈ってないぞ。俺は浮気自由な妻と結婚したいと祈っただけだ。まあ、お前たちが望むなら結婚してもいいとも祈ったがな」
「そうですか、それではここで、私たちと結婚すると誓ってください」
「わかった。お前たちと結婚する。しかし、浮気自由だ、それが俺の条件だ」
「その条件は、私たちの後ろにいる旦那様のご両親と村長と話をしてから決めてください」
「どういうことだ」
「私は今回、このあたりの領主になりました。あなたの生まれた村も私の領地に含まれます。ご両親と村長には旦那様が浮気をしたら村の税金を10倍にすると言いました」
「それは脅しか」
「脅しです」
「きたねえ、前世も陰険だったけど、今世は、陰険さに磨きがかかったな」
「何とでも、おっしゃってください。旦那様をつなぎとめるためだったが、私は何だってします」
その後、フェアフュアングは両親と村長と話をした。フェアフュアングの取り巻きの女性冒険者が騒いでいたが、結界を張って防御した。
そのあと、フェアフュアングと再度話をしたが、
「浮気自由と願って転生したのだから浮気をすることは神様も認めてくれた。それに俺は異性を虜にするスキルも持っている。これは前世にはなかったスキルだ。これを与えてくれたということは、神様も浮気をしろと言っているようなものだ。だから浮気はやめない」
と言い張った。
すると彼の両親と村長が泣きながら止めに入った。
結局、浮気については事前承認。前世の妻たちの了解が得られた場合は追加で妻とする。それまでは子づくりはしない。これでやっと合意が得られた。
こうして皇女殿下の目的は妥協の産物ではあったが一応の成果を見たのであった。




