46.馬車の旅と対策会議
帝国に帰った皇女殿下は皇帝と皇后に今回のあらましを説明した。
ブレンブルグ王国の王妃の浮気をネタに国王をゆすったという話にはさすがに「10歳の女の子がする話ではない」と皇帝に言われたが、「これで円満にフェアフュアングの生まれた村の領主になれたのだからそれでよかった。ではほかにどんな方法があったのだ」と開き直ったら、「わかった」と了解された。
そこで、皇女殿下は男爵領を治める文官と武官の派遣を皇帝に要請した。皇帝からは、ほとんどは現地のこれまでの文官や武官を再雇用するとして、足らない指揮官クラスについては、今の帝国の文官や武官のうちそれぞれ10人程度を派遣してもらえることになった。
そして、派遣する文官と武官とともに、再度ブレンブルグ王国に向かった。また1か月の馬車の旅、暇である。そこで、今度は前世の妻たちを連れて行くことにした。邪魔なメイドは要らないと皇帝に言った。馬車は10人が余裕で乗れる大型の馬車を用意した。そして、妻たち全員で1台の馬車に乗車している。馬車の中で、今後のフェアフュアングを捕まえるための対策会議を開催した。
会議の参加者は
正妻、レムの生まれ変わり、エルネスティーネ帝国皇女(帝国)
第2夫人、ミリーの生まれ変わり、ヘレーネ子爵令嬢(帝国)
第3夫人、セリーナの生まれ変わり、フランツィスカ伯爵令嬢(帝国)
第4夫人、オリーヌの生まれ変わり、アロイジア男爵令嬢(ズウォレタット王国)
第5夫人、イルメラの生まれ変わり、マルレーヌ(平民、食堂の娘)(シャルルランス王国)
第6夫人、アデナの生まれ変わり、ルナ(平民、冒険者)(パーペンランド王国)
第7夫人、カーチャの生まれ変わり、カルナ(平民、冒険者)(帝国)
第8夫人、カロリーネの生まれ変わり、マリア伯爵令嬢(元は男爵令嬢)(帝国)
第9夫人、アニカの生まれ変わり、リッカルダ(元奴隷、現在は伯爵家メイド)(トリスタント王国)
第10夫人、リンダの生まれ変わり、マヤ、(元孤児、現在は伯爵家メイド)(帝国)
である。
「それでは恒例の対策会議を開催します。まず現在の状況を説明します。フェアフュアングはライムの転生者でした。そして空間魔法と甘美の香りというやっかいなスキル保持者です。このスキルを活かし、多数の女性を侍らせて、その女性たちに食べさせてもらっています。私は彼の生まれた村の領主になることが出来ました。
今後の方針ですが、フェアフュアングの両親に迫って、私とフェアフュアングとの婚姻届けにサインさせます。そして、彼の両親に、フェアフュアングがこの婚姻を承諾しなかったり、逃げ出したりした場合は村の税金を10倍にすると迫ります。そしてこれを村の村民にも周知します。彼の家族と村人を人質に彼に私との結婚を承諾させます。ここまでいいですか」
「異議なし」
「問題はそれからです、彼がすんなり結婚に同意するかです。皆さんどう思いますか」
「はい」
「マリアさんどうぞ」
「はい、まず、ライムがあのネンネリ広場で何を祈ったかです。それによって、対応が違ってくると思います。私たちは『来世もライムと結婚できますようにと祈った』のですが、あの時も話したと思いますが、たぶん、『浮気し放題の妻に巡り合えますように』と祈ったと思います。するとライムが転生したのは神がライムの願いを認めてくれたのだから、自分は浮気し放題だと開き直ると思います」
「皆さんどう思いますか」
「それはありうる。とにかくあいつは顔はいいけど性格がゆがんでいる。ああ、もう、なんであんなクズに惚れたのだろう」
何となく全員が愚痴を言い出したので会議はしばらく中断した。
馬車の旅は長い、延々と見慣れた車窓が続く。帝都を出たといっても、ここはまだ帝国内、時間はいくらでもある。
領地の経営には、皇女殿下は興味がない。普通だと派遣する文官や武官と領地の経営方針などについても話し合う必要があるが、そんなことはする気がない。ある一部の村を除いて。したがって、皇帝が選任してきた文官と武官には「領地は適当にしろ」と言ったきりである。もっとも皇帝が選任した文官と武官のほとんどは皇帝のスパイである。皇女殿下が暴走しないか、最近はめっきり報告が少なくなってきた皇女殿下の動向の報告である。彼らにも領地経営は二の次なのである。
しばらく愚痴を言い合った後で、アロイジアが
「たぶん、フェアフュアングは皇女殿下との結婚に同意すると思う。家族と生まれた村を人質に取られたら、フェアフュアングも同意せざるを得ないと思うわ。それにライムも前世は公爵だった。浮気癖はあったが領民をないがしろにすることはなかった。
そして、前世の妻である私たちを妻にすることにも同意すると思う。そして『ハーレムだ』とか言うと思う。問題はその後、妻にする女がそこで止まらないことだと思う。皇女殿下との結婚の条件に、『浮気自由を認めろ』と言われたら、皇女殿下どうします」
「そんなあ」
そう言って皇女殿下は絶句した。
しばらくして、
「やはり浮気はよくない。ここにいる10人は前世の同志、それについては妻になることを認める。しかし、それ以外の女が後から後から湧き出てきたら、私、もういや」
この日は皇女殿下がパニックになって役に立たなくなったので、この話は次の日に持ち越された。




