44.皇女殿下の暗躍
数日して帝国からブレンブルグ王国へ、皇女殿下を特使、ヘレーネ子爵令嬢を副官とする一行が出発していった。今回は皇女殿下の初めての外国公式訪問ということで注目を詰めた。護衛もかなりの数に上った。特使一行は王宮での出発式の後、王都の中央大通りを華々しく行進していった。
帝国は広い、前回同様最初の2週間ほどは帝国内、そして、国境を越えても次は属国である。馬車の中ではすることもない。幸い馬車は皇女殿下とヘレーネそれにフランツィスカとマリアである。皇女殿下は馬車の中からたびたびブレンブルグ王国の王都に転移して、かつて配下にした暗殺ギルドの面々に指示を出していた。
「あと4週間ほどすると帝国の特使として、私がブレンブルグ王国の王都へ来ることになっている。それまでに、ブレンブルグ王国の闇の部分、前回もらったような闇帳簿があればなおいいが、なくてもそれなりの情報が欲しい。一番欲しいのは貴族が暗躍しているような情報だ。目的はこれをネタにブレンブルグ王国の王家をゆする。そして私をブレンブルグ王国の貴族にさせることだ。」
「お頭、なぜそのような、まどろっこしいことをするのですか。お頭なら、そんなことせずとも王宮へ乗り込んで威圧すれば、たいていの人間は言うことを聞くと思うのですが」
「そんなことをしてみろ、私が極悪人になってしまうではないか」
「私は、きれいにこの国の貴族になりたいのだ。少なくとも表面上はな」
「つべこべ言わずに、とりあえず今持っている情報だけでも何かないか」
「あります。なんでも、王様は正妻に隠れて、愛人を囲っているそうです」
「でも、王族なら、愛人の1人や2人いるだろう」
「そうでもないです。この国の場合、正妃は公爵家の出です。その公爵家の後ろ盾で国王になったのだから、浮気をすると問題になるのでは」
「証拠は」
「ない」
「それは難しいな。他には」
「相変わらず第2王子は、第1王子の足を引っ張るように暗躍しているようです」
「証拠は」
「ありません」
「使えないな。やっぱり、こいつら、暗殺ギルドと言っているけれど、しょせんは雑魚。役に立たない」
とりあえず、今あるのは前回手に入れた裏帳簿だけ。これを生かすには、さらに何かが欲しい。そこで、反国王派の貴族の親玉の動向を探らせた。ついでに証拠を集めるため、映像を記憶する魔道具も渡した。
次の日、また馬車の中から暗殺ギルドに転移した。今度はヘレーネと一緒である。王宮でスパイを見つけるためである。王宮にヘレーネと一緒に転移して、物陰に隠れた。念のため隠蔽魔法もかけた。物陰からあたりをうかがっていると、何か変な声が聞こえてくる。
「あはーん。そこそこ」
どうも誰かがお楽しみのようである。とにかくこういうのは前世以来で久しぶりである。向学のため、音声と映像を記憶することにした。物陰から出ると見付かるため、魔道具だけ、声のする方に近付けた。
しばらくして声の主がいなくなったので、魔道具を回収して、暗殺ギルドに転移した。そして、この映像を暗殺ギルドの面々に見せたら、どうも王妃様と護衛の騎士のようである。どうも、国王も国王なら王妃も王妃のようであるダブル不倫である。
そこで、いいことを思った。王妃の子供のうち何人が国王の子供なのだろう。若し、王子や王女の中に国王の子供でない子がいたら。これネタに国王をゆすれる。
そこで、次の日、皇女殿下とヘレーネは再び王城に転移すると、ヘレーネに王子や王女をかたっぱしから鑑定してもらった。すると、第1王子は国王の子供であったが、第2王子と第3王女は国王の子供でなかった。
王城にあまり長くにいると見付かる。そこで、すぐに馬車に戻った。対策会議である。約1名役に立たない人間がいるが、計算のスキル持ちのマリアは役に立つ。
「ねえ、マリア、王妃が浮気したとして、第2王子と第3王女は国王の子供でないというのは難しいよね」
「そうですね、下手すれば、国を侮辱したことになりますね」
「そう何か次の一手が欲しいわよね」
「親子鑑定なんてできないのかな」
「宮廷魔導士ならできると思いますが、出来ても真実を言わないと思います。言えば殺されますから」
しばらくして、マリアが
「だったら、さあ、そんなうわさを流して、逆に、親子だという証拠を出させるようにしてみたら」
「でも、親子じゃないのでしょ。そんな証拠出てこないのじゃないの」
「出てこないからいいのです。そこで、この浮気の証拠が生きてきます」
「これを出されたら、国民が納得しなくなります。当然国王も王妃も皇女殿下の言うことを聞かなくてはいけなくなります」
「さすが、マリア、すごい。そこまで考えなかった。頭いい」
「おほめにあずかり光栄です」
それからの行動は早かった。暗殺ギルドに
「第2王子と第3王女は国王の子供ではない。王妃が浮気して作った子供だ」という噂を流せと命令した。そして、この話は国中に配置した奴隷冒険者にも流させた。また、セルフホーフェン商会の支店やその取引先にも流させた。
そして、皇女殿下がブレンブルグ王国の王都に来る頃には国中がこの話で持ちきりとなった。




