35.魔獣の襲撃2
特使一行が峠に差し掛かるころ、遠くで魔獣の声が聞こえる。なんか嫌な予感がする。転生して前世の記憶を取り戻してから、魔法の威力が増したのはいいのだけど、なんか魔物にも好かれているみたいで、先日のワイバーンじゃないけど、なんか魔獣が私を狙ってくるみたいな気がする。
今日も、遠くの魔獣の雄たけび。私は索敵魔法で探るとオークが数匹。これぐらいなら、
「水よ、オークの頭のところで爆ぜよ」
するとオークの頭が爆散した。これで良し。最近は爆散魔法も爆散させる場所を特定できるようになった。慣れである。毎日爆散魔法を使っているとオークぐらいだと眠っている間にできるようになった。おっといけない、寝ている間ではなく。馬車の中で寝たふりをしながらの間違いである。物事は正確に言わないと語弊を招く。
アリーナさんが訝しげな顔で問いかけてくる。
「ヘレーネちゃんて大物よね。魔獣の雄たけびを聞きながら眠れるのだから。私なんか馬車の中にいても不安で。みて、体の震えが止まらないの」
最近はアリーナさんも勘が鋭くなってきたので、回答を間違わないと突っ込まれる。回答は明瞭正確そして簡潔をもっとうにしないといけない。
「そう、そうなの。私寝ていたから」
「そう、ほんとう」
「ほら、昨日寝るのが遅くなったから」
「そう」
中々解放してくれない。じっと我慢である。
そのようにしていたら、騎士の叫び声
「オーガが出た。全員特使一行を守れ」
いけないアリーナさんに注意をそがれたら、魔獣への警戒を怠った。見ると、オーガが護衛の騎士を蹴散らして、まっすぐにこの馬車に向かってくる。そう、特使の乗る馬車は無視して、私とアリーナさん御乗る馬車に向かってである。
ここは出し惜しみするわけにいかないので、オーガに向かって爆裂魔法をぶちかました。オーガを一度で倒すといけないので、ここは威力弱め、足元を狙って爆裂魔法を放った。するとオーガの足元の土が崩れて、オーガが倒れた。すると騎士がガーガに切りかかった。でもオーガって強いのよね。切りかかった騎士を跳ね飛ばした。
誰か魔法を放ってよ、護衛の中には魔法士もいるはずなのになのに、なぜ、誰も魔法を放たないの。そう思って魔法士を見るとみんな詠唱をしていた。ええー、魔法士の詠唱って、そんなに時間かかるの。いつも皇女殿下の魔法を見ていたから、魔法の詠唱なんて一瞬だと思っていたけど、これが普通なのかもしれない。これじゃ私の魔法は目立つはずだ。仕方がないので、私も他の魔法士と同じように詠唱するふりして、そして他の魔法士が魔法を放つのに合わせてもう一度オーガに魔法を放った。そう今度は頭を狙って。すると、オーガの頭が吹き飛んだ。
結局オーガは魔法士が放った魔法で倒されたことになったが、誰の魔法士の魔法かわからなかった。ただ、誰も、こんな強力な魔法は打てないと言ったが、私もこんな魔法は打てないと言い張った。アリーナさんは怪訝な目をしていたが、特使の「全員無事でよかった」の一言で犯人捜しはなくなった。
それからは平穏な日々が続く。そう表面上はね。私はひたすら索敵を使い魔獣の気配があると、遠くで魔法を放って魔獣が馬車に近付かないようにしていた。だから、馬車の中ではアリーナさんの言葉は無視して、ひたすら寝たふりをして過ごした。苦痛の日々である。早く帰りた。
何日かして、国境を抜けて、帝国領に入った。でもまだ、安心できない。まだ山間の道を進む。そして魔獣の出没地域が続く。最近なんか魔獣が増えていない。それとも私がいるから。私は魔獣に好かれるタイプなのかしら。魔獣と結婚なんてしたくない。私は素敵な旦那様と結婚するだから。あっ、でも前世でライムの生まれ変わりと結婚すると誓ったから、ライムの生まれ変わりと結婚するはずだし。もうわからないことばかり、早く家に帰りたい。
その後、特使一行は無事帝都に帰り着いた。ご苦労様でした。




