29.次の訪問国シャルルランス王国
特使一行は次の訪問国シャルルランス王国に向かった。シャルルランス王国はパーペンランド王国の南に位置しており、同じような平原が続く。また、お尻の痛い馬車の旅である。そして、見慣れた冬枯れの風景が続く、この馬車の旅も飽きてきた。
ヘレーネは先日の貴族との交流会での魔法のことを思い出していた。何か変である。もう一度自分の能力値を確認してみるが「スキル、生活魔法、言語理解、鑑定」としか出てこない。やはり、あの魔法は生活魔法だったのだ。だったらあの威力は何なのだ。わからないことばかりである。
もし、あれが生活魔法なら、私も皇女殿下のように。転移もできるのかな。でもここで転移したら戻ってこれない。皇女殿下は「索敵も使える」と言っていたから、索敵を使ってみるか。ということで、心の中で「索敵」と唱えた。すると、遠い空の上からまるで下を見ているような感覚にとらわれた。そして、その空の下に自分の馬車が動いているのが分かる。
下を見る視点を、遠くに向けると、遠い空の上に飛ぶ鳥のようなものが見える。そして、その鳥のようなものが急にこちらへ向かって飛んで来る。何となく危険を感じて、その鳥のようなものを注意深く観察すると、それは鳥でなくどうもワイバーンのようである。
これは危険だと思い、ワイバーンに向けて「爆ぜよ」と唱えた。すると、ワイバーンの近くで先日と同じような爆発が起こった。すると、ワイバーンは向きを変えて逃げ出していった。「私、知らない。寝ていたことにしよう」幸い目を閉じていたので、アリーナさんにはばれていない。
すると、護衛の騎士が、馬車を止めて、声をかけてきた。
「今、上空にワイバーンが現れたのですが、急に向きを変えて行ってしまいました。戻ってくると危険なので、ここで、円陣を組んでしばらく待機します。危険がないと判断できれば、また出発します」
これを聞いて、アリーナさんが
「ワイバーンなんて危険よね。ここは平野のど真ん中、襲われたら隠れる場所もないし。向こうへ行ったのならよかったわね」
と話しかけてきた。
「そう、私寝ていたから気づかなったわ」
「こんな時でも寝られるなんて、さすが、ネレーネちゃんは将来大物ね」
何とかごまかせた。
これではっきりした、私の生活魔法は何でもありだ。ひょっとしたら、転移もできるかもしれない。でもこれは1人の時に試してみよう。そう思った。
その日の夜、宿で1人になる機会を探したが、部屋は女性ということで、アリーナさんと一緒、中々1人になれない。その日はあきらめて寝た。
次の日も昨日と同じマンネリ化した馬車の旅、今日もお尻が痛い。そこで「私も治癒魔法が使えるかな」と思い、自分に向かって「ヒール」と唱えてみた。すると、お尻の痛みが消えた。「やったあ」思わず叫んでしまった。すると、アリーナさんが
「どうかしたの。何かいいことあった」
「いいえ、夢の中で、ケーキを食べたので」
「そう、それはよかったわね」
私も、ごまかすのがうまくなった。
私の生活魔法は、威力がおかしい。これが若し転生者得点だとしたら、ほかの転生者も同様かもしれない。皇女殿下も「威力が増した」と言っていたし、早く他の転生者を見つけないと大変なことになる。戦争の道具にでもされたら大変である。これは皇女殿下に要報告である。
そんな表面上は怠惰な。心の中ではかなり詳細な検証を行う旅が数日続いた後、特使一行はやっとシャルルランス王国の王都に着いた。この王都はこの国最大の都市で、王城を中心に放射状に広がる街路に沿って家並みが続いている。帝国よりは南に位置することから、この季節でも少し華やいで見える。しかし相変わらず都市の人間臭さは同じである。見た目はいいのだけど、臭いをかぐと幻滅する。これがネレーネの王都に着いた感想である。




