25.ヘレーネの転生者得点
ズウォレタット王国での公式行事も終わり、特使一行は次の訪問国パーペンランド王国に向かった。パーペンランド王国はズウォレタット王国の西に位置する国である。ズウォレタット王国同様、北に面した地域には海もあるが、この国は国土が広いこともあって、どちらかというと農業国である。
ズウォレタット王国とパーペンランド王国との国境を過ぎて、しばらくすると平原に出た。一面の麦畑が続く。と言っても今は冬。うっすらと積もった雪で何も見えない。心の中で想像するだけである。とにかく単調なのである。おまけに道が悪い。ガタガタと揺れる。そのうち気分が悪くなってくる。もう体力勝負である。アリーナさんは涼しい顔をしている。何となくむかつく。するとアリーナさんが
「ダメよ。ヘレーネちゃん。気持ちを表に出しちゃ。ここは、心を無にするの。そうすると何も感じなくなるから」
「アリーナさんほど人間が出来ていないので」
少し嫌味を言う。
「皇女殿下みたいに転移が出来たら、私も一瞬で外国に行けるのに」
と思う。現実逃避である。
「私にも転生得点ないかな」これも現実逃避である。そんなことを考えていたら
「それにしてもヘレーネちゃんはすごいね。昨日のお茶会、ズウォレタット王国の貴族令嬢と普通に会話していたじゃない。大陸共通語と言ってもズウォレタット王国は少し癖があるから、帝国の人は普通に会話できないのよ。私も最初は苦労したから」
「みなさん気を使ってくれましたから」
そう言って「あれ」と思った。こうやって外国に来ているのに普通に会話できている。外国の言葉も文字も違和感なく読めるし、会話もできる。これって、転生者得点なのかな。そう思った。
他にも転生者得点ないかな、そう思って、能力値の表示と唱えたら、目の前に透明な板のようなものが出てきた。「アリーナさんに見られるとまずい」と思ったが、アリーナさんには見えてないようだった。
そこには、「スキル、生活魔法、言語理解、鑑定」と出ていた。これが私の転生者得点かな。鑑定って何ができるのかな。わからないので、アリーナさんを鑑定してみた。すると
「アリーナ、伯爵家三女、婚約者なし、彼氏募集中」
と出てきた。
すごい、これが私の転生者得点。このスキルを使えば、転生者が見つけられる。これは皇女殿下もお喜びになる。そう思った。その後はかたっぱしから鑑定をしまくった。そうしたら、急に胸が苦しくなった。「ああ、魔力切れだ」と思ったが、もう遅い。青い顔して、戻しそうになった。そうしたらアリーナさんが御者に言って、場所を止めてくれた。私は外に出て道端に吐いた。
アリーナさんに
「ヘレーネちゃんもやっぱり7歳なのね。時々大人と話をしているのじゃないかと思ったりするけど、馬車で酔って吐くところなんか子供ね」
と言われた。
結局ヘレーネが気持ちが悪くなったということで、特使一行は、ここで、小休止した。そのため、その日は宿に着くのが遅れた。宿に着いて、「一人になったら絶対に皇女殿下を呼んで鑑定のことを報告しなければいけない」と思ったが、この日は一人になる機会はなかった。
次の日も単調な風景が続く。今日は少し抑えて控えめに鑑定をかけた。最初は特使一行と護衛に鑑定をかけた。鑑定もだいぶうまくなった。その後は、パーペンランド王国の護衛の騎士に鑑定をかけていった。すると、おかしな人がいる。たいていの護衛騎士は騎士と出るのに、この人はペテン師と出る。
そこで、ヘレーネはアリーナさんに
「あの、パーペンランド王国の騎士の人でおかしな人がいるのですが、スパイだと困るのですが」
と言うと、アリーナさんが、真剣な顔で
「どの人」
「あの、少しうつむき加減の、青い髪の人」
「確かに、少し変ね。わかった、今度の小休止の時に特使に伝えるわ」
小休止の時にアリーナさんが、特使にこのことを伝えると、すぐにパーペンランド王国の人に言ってもらったようである。すぐに、その人を拘束しようとしたら、その人が急に逃げ出した。そして、こちらに向かってくる。
思わず
「爆ぜよ」
と唱えたら、その人が馬ごと吹き飛んだ。
自分でもびっくりである。私のスキルは生活魔法である。こんなことが出来るはずがない。
その後、その人は捕まえられた。いつの間にか本来の騎士と入れ替わっていたようである。目的や背後関係はこれから調べるそうである。
アリーナさんに
「ヘレーネちゃんてすごいのね。偽物を見破る目と、あのすごい魔法、さすが皇女殿下に見込まれただけはあるわね」
と言われた。
特使にも褒められた。
このようにして、単調な中にも波乱に満ちた場面ありで、特使一行の友好の旅は続いた。




