22.第4夫人オリーヌの生まれ変わり、アロイジア男爵令嬢
皇女殿下とヘレーネ子爵令嬢はアロイジア・ハイゼンスタット男爵令嬢が第4夫人オリーヌの生まれ変わりかどうかを確かめるために、ハイゼンスタット町に転移した。
辺りは夕刻の港町。とりあえず、旅人を装って、雑貨を売っている店の人に、宿屋はどこか聞くが、はたから見ると7歳の女の子が2人、怪しさ満点である。
「お嬢ちゃんたち迷子かい」
「私たちはこの国を旅している旅人。ここに宿屋はありますか。それから御領主様にも挨拶をしたいので、領主館の位置も教えてほしいのですが」
会話がかみ合わない。でも着ている服がいかにも貴族というような高級品なので、店の主人も無下にできない。
「お嬢ちゃんたち、家出してきたのではないですよね」
「そんなことはない。我々の旅は親も承知の上である」
店の主人も、面倒ごとは嫌である。相手が、いかにも貴族という風貌なので、とりあえず領主館に連れて行くことにした。
領主館の前で、門番に
「いかにも貴族といった感じの人が御領主様を訪ねてきましたので」
と言って門番に丸投げした。そして逃げるように帰っていった。
ほんとは密かにアロイジア男爵令嬢に会うはずが、門番に紹介された以上逃げるわけにもいかず、対応に出た男爵家当主に面会することになった。ヘレーネが皇女殿下に小声で
「どうするのですか、大事になりそうなのですが」
「もう、開き直るしかない。私は皇女殿下の密命を受けたコロ、そしておまえはタマいいな」
「コロとタマて、前世の公爵邸で飼っていた猫の名前じゃないの」
「だって、とっさに思いつかなかったのだもの、私もあせっているのよ、細かいことは気にしない」
しばらくして、ハイゼンスタット男爵家の当主が現れた。後ろに護衛を伴って。ずいぶん怪しまれている。
「私はブルヘンハイム帝国のエルネスティーネ皇女殿下の密命を受けたコロ、そしてこちらは助手のタマです。今回領主館に伺ったのは、男爵家のご息女アロイジア様に皇女殿下からの伝言をことづかってきたからです」
「失礼ですが、あなたたちが、帝国の使者であるということを示す何か印をお持ちですか」
「わかりました。ここに、帝国皇家の紋章の入った短剣があります。この短剣には青い涙と言われる最高級ダイヤをはめ込んであります。手に取ってごらんになってください」
そう言って、当主に短剣を手渡した。男爵家当主がその短剣を手に取ってみると、確かに帝国皇家の紋章が彫り込まれている。それに大きなダイヤはキラキラ輝いてとても偽物には見えない。
「わかりました。この短剣はどう見ても帝国皇家のもの。失礼しました。すぐにアロイジアを呼んできます」
しばらくしてアロイジア男爵令嬢が現れた。そして開口一番
「コロとタマって昔飼っていた猫の名前じゃないの」
と言って笑いだした。これには当主も驚いて
「アロイジアはこの人たちを知っているのか」
「会うのは初めてだけど、知っている人たち。大丈夫、男爵家に危害を加えたりしないわ」
「お父様、この人たちは私と同じ前世の記憶を持っている人たちだわ。私は前世ではオリーヌ、あなたたちは誰」
「私は、前世のレム、そして今はエルネスティーネ帝国皇女」
「私は、前世のミリー、そして今は帝国のヘレーネ子爵令嬢」
すると、男爵家当主が
「帝国皇女本人なのですか。ご無礼をお許しください」
と言って頭を下げた。
「気にしないでください。あくまでも今はコロとタマですから。帝国皇女は帝都にいます。そしてヘレーネ子爵令嬢は帝国の特使一行としてこの国の王都にいます。建前はそうなっています」
「それで、そのコロとタマがどうして、男爵邸に来たのですか」
「今私たちは、前世のライムとその妻たちの生まれ変わりを探しています。前世のあの時計台の前で誓った『来世も夫婦になるという誓い』の履行を果たすために」
「夫婦の誓い、どうしようかな。私前世では第4夫人だったじゃない。その点はどうなるのかな」
「私が正妻になると、ほかの人は愛人になると思います」
「そうだよね。かりにも帝国皇女だものね。夫が複数の妻を持つというのは世間が許さないだろうしね」
「ライムの生まれ変わりを見つけて、私の夫にすることと、他の妻たちを愛人にすることは、帝国皇帝と皇后の許可を得ております」
「へえ。皇帝が許したんだ」
「はい、『前世に神に誓ったことだから』と言ったら許してくれました」
「そうだよね。あの時神に誓ったのだものね。それで神様が転生させてくれたのなら、そうしないといけないのかな。わかったわ、とりあえずライムの生まれ変わりと結婚するかどうかはその時決めるとして、前世のライムとその妻の生まれ変わりを探すことには私も協力するわ」
「皇女殿下。そろそろ戻らないと。護衛が起きると問題になるので」
「すいません。急いでいるので今日はこれで失礼します。また後日きます。それでは御領主様、今日はお騒がせしました」
そう言って、皇女殿下とヘレーネは男爵邸から王都の部屋に転移した。そして、皇女殿下が転移した後、ヘレーネは護衛を起こした。
一時はどうなることかと思ったが、5人目を見つけた訳である。皇女殿下を入れると6人である。あと5人。ただ、アロイジア男爵令嬢は今世にも妻になるか微妙な雰囲気である。




