20.次の訪問国ズウォレタット王国
特使一行はブレンブルグ王国で、王宮での協議日程を終えた。今回の協議で、今後のさらなる友好の確認として、定期的に特使を派遣することが決まった。また、貿易の拡大として、帝国で生産される魔道具の供給の促進が議題に上がったが、魔道具の生産は民間でしていることなので、国が直接関与できない。それで、魔道具の生産については税の優遇装置をとることで生産を促進するということが決まった。王国が特に要望したのは帝国で最近生産量が増えたマジックバッグであったが、これがまさか皇女殿下が作っているとは知る由もないヘレーネを除く特使一行であった。
その後は、ブレンブルグ王国の国内視察となったのであるが、どこへ行っても牧歌的風景が広がるばかりで、1日目はいいとしても、2日目からは苦痛であった。アリーナが馬車の中で
「ヘレーネちゃんはやはり、子供ね。貴族は嫌なときでも涼しい顔でこう言うのよ」
「大変素敵でございます」
「これが処世術よ」
「特に宮殿とか皇帝一族がいる場ではね」
「はあ、そうですね」
「あまり、乗り気でないみたいだけど」
「ところで、どこで、ヘレーネちゃんは皇女殿下と知り合ったの。確かヘレーネちゃんは子爵令嬢よね。低位貴族が高位貴族ましてや皇族と知り合う機会なんてあまりないと思うのだけど」
まさか前世で1人の男を競い合ったなどとも言えず、
「子爵家で取引をしている商会で紹介されました」
「それって、どこの商会」
「セルフホーフェン商会です。皇女殿下がそこの娘を助けたということです」
「その話聞いたわ。娘が攫われて右往左往していたら、皇女殿下が娘を見つけてきたとか」
「そのようです。皇女殿下がたまたま路地から男がにらんでいるのに気が付いたと聞いています」
「人の縁て不思議よね、それで、貴族との取引が増えるのだから」
「そうですね。セルフホーフェン商会は今までは高位貴族との取引はありませんでした」
「うちは伯爵家だけど、セルフホーフェン商会と取引するようになったのは最近だわ。あのリバーシ、あれはすごいわね。あれ、リバーシは確か貴族令嬢が考えたって。もしかしてヘレーネちゃんが考えたの」
「私も考案者の1人になっています。みんなで遊んでいて、『こんなゲームがあったらいいな』て思ったらできました」
「すごいわね。考えるだけで、出来ちゃうのだから」
「はあ」
「あまり、浮かない顔ね。この臭い気になる」
「はい」
「大丈夫、今日でこの国の公式日程は終わり。明日からは次の訪問国ズウォレタット王国に行くわ」
「ズウォレタット王国て、どんな国なのですか」
「ズウォレタット王国は海の国よ」
「すると港かあるのですか」
「港もあるし、船もある。それに魚が美味しいのよ」
「それはすごいですね。新鮮な魚は帝都ではあまりお目にかかれないので」
このようにして、特使一行はブレンブルグ王国での公式日程をすべて終えた。次の日には国境を越えてズウォレタット王国に入った。そして、ズウォレタット王国の護衛騎士団に見守られて数日して王都に着いた。
王都に着いたのはいいのだけど、今度は磯の臭いがする。馬車の中で相変わらず鼻を抑えていると
「ヘレーネちゃんて、臭いに敏感なのね。先日までは動物の臭い、今度は磯の臭い」
それを聞くと、鼻を抑えるのをやめた。すると、磯の臭いがツンと鼻を突く。うっすらと目汁に涙が浮かぶ。するとヘレーネが
「ごめん、笑っちゃいけないのよね。そんな涙まで流さなくても」
「アリーナさんは何ともないのですか」
「ううん、慣れかな。これが貴族の処世術ね」
「そういうものですか」
「そう、そういうものよ。大人になればわかるわ」
それを聞いてヘレーネは「前世も入れれば私の方がずっと大人なのだけど」と思うのであった。
ブレンブルグ王国と同様、今日は公式行事はなしである。宿舎にあてられた、王宮の別館に案内された。ブレンブルグ王国と同様、明日は特使は王国の国王以下の高官たちとの会議、ヘレーネとアリーナはの国の貴族年鑑の調査、夕方からはヘレーネを除く特使一行は国王主催の歓迎パーティーである。




