15.第10夫人リンダの生まれ変わり、マヤ(孤児)
それから、3ケ月ほどたった。もう6月である。やっと新しい食品の工場もできて、販売体制が整った。セルフホーフェン商会では、直営店で販売する一方、食堂などへの材料の提供も始めた。特に昆布だしの料理については、隠し味として広まっているようである。
また、ポテイトチップ、フライドンポテト、唐揚げ、天ぷらについても居酒屋の料理の一品として人気が出ているようである。そして、一番人気なのが豆腐であった。これは、季節がこれから夏に近付いていくということで、つるっとした食感と冷たさが気に入られたようである。それと若い娘さんの間で、「これを食べると白い肌になれる」という噂が広まったのもある。
そんな中,1人の少女がセルフホーフェン商会の直営店でポテイトチップを盗んで帝都を警備する騎士に捕まったという連絡があった。ヘレーネはすぐに騎士団詰め所に走った。そこでヘレーネが見たものは、団員に殴られて顔を腫らした少女の姿だった。今回は金額的に少額で、セルフホーフェン商会もことを荒立てたくないということで殴られただけで終わったようである。ヘレーネが身元受取人になって少女を保護してきた。
騎士団の詰め所を出るとヘレーネは
「どうして、そんなことをしたの」
すると少女は
「懐かしかったから。昔食べたことがあった」
これでヘレーネは確信した。
「あなた、前世の記憶があるのでしょ。私はミリー。あなたは誰」
すると少女は目を見張って
「私はリンダ。ライムの第10夫人だった」
そう言って、ヘレーネの胸元に顔をうずめて泣き始めた。
少女がひとしきり泣き止むのを待ってヘレーネは
「今どうしているの。行くところがないなら、セリーナとカロリーネがいる伯爵邸に連れて行くけど、どうする」
「今は住むところがないから、そこへ連れて行ってほしい」
こうして、リンダの生まれ変わりを見つけることに成功した。名前はマヤ、孤児だそうだ。
伯爵邸へ行くと、まず当主に新しい仲間を連れてきたことを告げて、滞在の許可をもらった。今日はもう遅いということで、次の日みんなが集まってから話を聞くことになった。
次の日伯爵邸に皇女殿下とヘレーネがそろうと、マヤの話を聞くことになった。なお、マリア伯爵令嬢はフランツィスカ伯爵令嬢の強い要望でいまだに伯爵邸で暮らしている。フランツィスカに言わせると、マリアは怒らないので、家庭教師の先生よりわかりやすいとのことである。
マヤの話が始まった。
マヤは、娼婦である母親のもとに生まれた。父親の名前は知らないそうだ。母親が、仕事をしている間は一人狭いアパートで過ごしていたそうである。時々帰らないときがあると食べるものもなくひもじい思いをしたそうである。
そのうち、母親がまったく帰ってこなくなったので、母親の勤めていた娼館に行ってみたところ、客ともめて死んだそうである。
その後は住んでいたアパートを追い出されて、路地裏で物乞いをしたり時には店の物を盗んだりして食つなぐ日々を過ごしていたそうである。
そして、ポテイトチップの匂いを嗅いだ時、とても懐かしい思いがして、前世の記憶を思い出したそうである。そして懐かしさからつい店の物を盗んで、気が付いたら騎士団に捕まって詰め所に連れて行かれたそうである。その後はお仕置きということで殴られたそうである。その後ヘレーネに保護されたそうである。
マヤの今後をどうするかという話になったが、フランツィスカ付のメイドとして伯爵邸で雇ってもらうことになった。これは、フランツィスカの強い希望である。なぜなら、マヤは前世でも頭の程度はあまり良くなかったので、フランツィスカとしては家庭教師の怒られ役が増えた方がいいという判断である。マヤをメイドとして雇うことは伯爵家の当主の了解も得られた。
こうして、4人目を見つけた訳である。皇女殿下を入れると5に人である。あと6人、しかし、今回は孤児、悲惨な生活を送っていたようである。




