12.マリアの処遇
マリアを伯爵邸につれてきたわけだが、マリアをどうするか、それが問題となった。次の日皇女殿下が伯爵邸を訪れた。皇女殿下は伯爵邸に着くとまず、当主に
「このたびは、マリア男爵令嬢を保護していただいて感謝する」
と礼を言った。皇女殿下が、男爵令嬢のために礼を言うことに伯爵家当主は驚いた。
「私の進めている構想に彼女は必要な人材である。これ以上は言えない」
「わかりました。不肖メルケンブルグ、皇女殿下の構想に協力できたことに喜びを禁じえません」
「彼女にかかるお金については私が用立てるので、気にする必要はない」
「お金については陶磁器の保管料の名目で、セルフホーフェン商会からいただいているお金があります。それにあのリバーシはうちの娘が考えたとは到底思えないのです。それなのに皆さんと同じ使用料を頂いでおりますので、気にする必要はありません」
「それならたくさん費用がかかるときは言ってほしい。私も陶磁器の売り上げがあるので、宮廷に言わずともよいお金がある」
「わかりました、その時はお世話になります」
その後、フランツィスカの部屋に行って、今後のことを相談した。まず、これまでのことをマリアに話してもらうことになった。
マリアは男爵家の庶子として生まれた。母親はメイドだった。正妻が妊娠中にメイドに手を出したようである。それで、母親ともども離れに追いやられたそうである。その後母親が流行り病でなくなると、メイドのような扱いになったそうである。特に正妻からは会うたびに泥棒猫の子と言われていたそうである。教育もろくに受けていないようで、前世の文字は読み書きできるが、こちらの世界の文字はあやふやとのことである。
マリアの教育はフランツィスカと一緒にこの家でフランツィスカの家庭教師に教えてもらうことになった。これについては当主の了解も得られた。当主に言わせると
「フランツィスカだけだとすぐにさぼるが、友達と一緒だと、いい刺激になるだろう」
とのことであった。
これを聞いたフラツィスカは
「私が教えてあげる」
と息巻いているが、果たしてどうか。
ちなみに前世ではカロリーネは商家の娘で計算は得意であった。文字を覚えたら立場が逆転するだろうというのが皇女殿下とヘレーネの見方である。
その後、男爵家をどうするか、マリアに
「男爵家に戻りたいか」
と言聞くと、
「戻りたくない」
と言うので
「どこかの貴族の養女にしてはどうか」
という話になった。
すると皇女殿下が
「貴族家の養女というと、大問題なので、一度皇帝と皇后に相談する」
は言った。
この話が皇帝のところまで行くというので、マリアはもちろんフランツィスカとヘレーネも驚いた。皇女殿下の決意は固いようである。
その日の夜、マリアの処遇について話をしたところ
「お前の護衛に付いている騎士が、伯爵家の出だからそこの当主に話をする」
と言われた。
これを聞いた皇女殿下は
「あのレベルの低い護衛が伯爵家の出身」
と思わず叫んだ。
すると皇帝が
「それはどういうことだ」
しかたがないので、商家の娘が攫われたとき、たまたま通りかかった皇女が路地裏にいる男を見つけて、「あの男があやしい」と言ったのに、取り逃がしたことを説明した。
皇帝は知らなかったようである。
これを聞いて皇帝は
「『前回の失態を帳消しにする』と言えば、マリアを養女にしてくれるだろう」
とのことである。
その後、しばらくして、マリアは男爵家からセントテルベルグ伯爵家の養女になった。やはり、皇帝が動くとすぐに事は進むようである。
そして、マリアがセントテルベルグ伯爵家に移ろうとするとフランツィスカが
「いかないで、マリアがいなと家庭教師の先生がすぐ怒る」
と言い出した。
どうも、マリアはすぐに文字を覚えて、フランツィスカのわからないところを教えていたようである。
結局フランツィスカの強い希望もあって、もうしばらくメルケンブルグ伯爵家で過ごすことになった。




