37 処理業務
「バンくん、終わった?」
「後ちょっとです!数が減ると、動きが速くて」
朝食前、朝食を取る、朝食後には再び堀の処理、をバンに任せている。
土塁の上からなら搬入出来るので、バンが仕留めたのを搬入する。
スペースが開くと、どうしても狼系は俊敏に矢を避けてしまう。
仕方が無いので、一晩煮込んだオーク内蔵の水煮をばらまく。
一晩中堀の中で過ごしたのだし、食べてもゴブリンが少々。
「おぉおぉ、戦闘よりも空腹が勝つよねぇ~」
「狙いやすくなりました!ありがとうございます!」
これでも数が減らない様なら、隠密スキルを使ってロープで降下すれば処理も捗るだろう。
あ、バンくんの矢に気を付けないといけないな。
射線に入らないとか、流れ矢とかに注意しないとな。
「終わりました~」
朝食の後片付けを済ませたころには、バンも終わらせてくれたようだ。
さて、搬入して獲物だけは残し、矢だけを搬出し、バンに返しておく。
出発するので、一辺の土塁を搬入し、馬車が通るだけの堀を埋める。
舗装路に戻ると、再び北に進路を取る。
舗装を繰り返しながら馬車を進めつつ、バンには周囲を警戒を任せる。
ブラックホースは昨日の狩りの際に十分に草を食べて回っていたようだ。
ブラックホースは野生動物で草食だが、本当に草だけで良いと言う訳では無い。
この問題は早急に解決した方が良いのだが、その目途も立っていない。
そして塩問題も。
前途多難である。
陽のある内は最大限進めるだけ、進む。
そして陽が傾く前に、森へ侵入する。
速めに舗装路からそれて、昨日よりも深めの堀と、高めの土塁を建築しておく。
ロープを予め投げて置き、土塁内でオークを1体解体する。
解体した肉の脂身処理と今後の調理の為の処理と、木をラッシュで解体することを任せる。
まぁ、それもすぐ終わるだろうから、先に仮眠を取る様に言っておく。
ロープを使って堀を降り、別のロープで堀を登る。
さて、そのまま森へ向かう。
気配察知と魔力察知を使用しつつ、敢えて隠密は使わない。
誘う、と言う意味合いもあるのだが、何となく成長しない隠密よりも成長する方を優先して使いたいのだ。
そのまま森に入り、道中焚き木を集めては奥に進む。
適当な広さのある場所を見付けて、周囲の枯れ葉も集める。
予め準備したオーク肉を木串を作って肉焼き準備を済ませて、火起こしする。
「さて、夕食に間に合う程度の距離感で焼こうかな」
少しだけ火から離れる。
さて、今日はどれ位の成果になるかな。
ゴブリン35体
狼(野生動物)15体
グレイウルフ25体
オーク肉では、オークは釣れないか。
でも良い匂いだし、共食いしてくれても良いのだが、今はオーク肉は十分あるので、グレイウルフの方が嬉しい。
来る冬に向けて良質な毛皮が手に入るのは大きい。
南部の冬がどの程度の物なのかは分からないが、有るに越したことは無いだろう。
それに肉はバックパックに搬入しておけば、腐らないので、保存しておくことに問題無い。
オーク肉程では無いが、グレイウルフの肉も結構美味なので、悪くない。
処理法や調理法を変えれば十分に食材として使える。
狼に関してもグレイウルフほどでは無いが、十分に利用価値はある。
一般市民の防寒具としても普通に流通している。
でもそれは、ミラード開拓都市に限るのかも知れない。
工芸職人は裁縫師の職業を含む条件になっているので、仮拠点に変えれば何かを作れば良いだろう。
この分なら、良質な皮をそれなりに集められるだろう。
防寒着に布団に敷き物も欲しいな。
「ただいま~」
ロープを使って堀と土塁を超え、ロープを回収する。
「お帰りなさい。竈の準備は出来てます」
「じゃあ、今日もオーク肉ステーキ適量とスープにしようか」
オークを1体解体して、脂身処理をバンに任せて今日分の内臓を確保する。
さて、夕食を堪能したら、オーク内臓の水煮を作ろうか。
「結構集まってますね」
「うん、水煮でも結構集まるもんだね。肉焼いたらもっと集まるかな?」
「これ以上集まると、互いを踏み台にして登って来ませんか?」
「そしたら、深く高くすればいいだけだよ。でもこの場所じゃ野生動物とウルフくらいしか集まらなさそうだから、旨味はどんどん下がるね」
需要は満たされつつある。
オークは重量があるから、もういいかな。
ゴブリンはそもそも成長の糧としてしか見ないでおこう。
野生動物も要らないかな。
魔境に近付けばそれなりのモンスターに出会えるかも知れないが、ブラックホースを放置する訳にもいかないし、ちょっと遠出して1泊してみてもいいかな?
いや、仮拠点で荷物を整理してからの方が良いだろう。
「じゃあまぁ、バンくん、仕留めをお願ね」
朝食が済んだら、後は片付けと堀の収穫物の搬入だ。
その後はまた土塁を堀に移して再出発だ。
「帰って来ましたね~」
「あぁ、やっと帰って来れたね」
帰り道は順調だった。
予定よりも長く時間が掛かってしまったが、無事だ。
でも、問題はあった。
毎夜の収穫物の問題だ。
要は、獲れ過ぎたのだ。
お陰でバックパックは勿論、マジックバックも満杯になり、生肉は詰め、なるべく肉食生活にしてきた。
それでも嵩ばる物は馬車に載せた。
結果、重量過多により車軸が折れた。
リペアもしたが、3回も。
仕方が無いので、荷物を下ろし、城塞設計士を外して工芸職人を使って新しい馬車を造った。
鉄素材に関しては壊れた馬車の解体で間に合わせたが、大型化により、不足気味なのは否めない。
そして出来上がった新しい馬車は、2頭牽き仕様になってしまい、ブラックホースには無理をさせてしまった。
進行速度は遅くなったが、ブラックホースが優秀な荷馬で良かった。
さて、この辺りから仮拠点に向けて舗装を曲げよう。
おぉ、防護柵は邪魔で、複雑にくねらせなければならなくて、面倒だ!
いや、作ったのは自分だった!?
自分たちの帰還にも障害になってしまうのは、いや、防衛陣地なのだから仕方ないか。
「はぁ、城門を開けるのに、また搬出しなきゃいけないのか」
生肉は出したくないし、結構な重量物を選別して馬車はマズいか。
城門前で露店宜しく並べるか。
ん?
城門に何か貼られてる?
『7日後にまた来ます』
ん?もう1枚ある?
『お留守の様なので、3日後にまた来ます』
2回の訪問があったってこと?
誰だろう。
城門に来るまでに特に馬の足跡も馬車の痕も無かった。
ミラードの使者?
でも開拓の指示を受けて内密に出発したし、父上の手の者?
えっと、7日後って、いつ貼ったのか分からないから、明日かも知れないし、今日からも知れない。
寧ろ、昨日だった可能性も。
そうすれば、放置城塞として認識して諦める可能性もある。
どうしよ。
とりあえず、これからはこの仮拠点は、本拠点になるな。