6:訓練開始
「さて、お前が勇者とはいえ俺は訓練で手を抜く気はない。まぁ、お前が少しは強くなったら内容も減らしてやる。」
「はいはい。で、訓練って何をやるんですか?」
「お前基礎体力をはどれくらいだ?」
「基礎体力、ですか」
元の世界なら一応部活はやってた。やってはいたが、学校として部活動が厳しいというわけでもなく、所属していた陸上部も半年前からさぼりっ放しだ。あとは特に運動することもなく、家の番人をしていた。
「ほとんど、引きこもりの体力と思っていただければいいかと」
自分の体力がしょぼいものである、とわかっているため若干言いにくい。
「引きこもりってなんだ」
怖っ。この人、魔王からエルダラムって呼ばれていたな。エルダラムさんは、いわゆるヤクザみたいな口調のときがあって、今も質問のはずが怒られているような気持ちになる。そのせいで、魔王と話している時よりも敬語を使わないと行けない気になる。
「要するに、運動しないでのんびりしたいことしてるやつですなね」
「結局大した体力はないんだな?」
「…そのとおりです。」
「わかった」
そう言ってエルダラムさんは頭おガリガリかきながら、訓練場と言っていたところを指差す。
「ここは、一周一キロメートルある。今日中にここを五十周走れ。」
「ゴジュッ…」
こっちでも距離の単位は変わらないんだな、と現実逃避したくなるが、逃げれないと覚悟を決めて、答える。
「無理です」
「アァン?」
「いえ、ぜひやらせていただきます」
「したらチャッチャと走ってこい。終わったらそこの侍女に言え。部屋に連れてってくれるから」
それが、勇者に対する扱いかよ、と突っ込みそうになるが、こらえて大人しく走ることにする。
走りだそうとすると声をかけられた。
「先に言っとくが、訓練以外にもこの世界についてのことも教えるからな」。寝る時間は相当少なくなる。今日が最後の休憩だと思え」
「なんで走る前からやる気を削ぐんですかっ!」
「そうしねぇと気合がはいらねえだろ」
ごもっともです。すっげぇ気合が入らざるをえないわ。
「じゃ、頑張れよ」
最後にそう言って建物に入っていくエルダラムさん。しゃーない、走るか。
「いっちに、いっちに」
自分で声を出しながら走ると、久しぶりなせいか楽しく感じた。体を動かすのは嫌いじゃなかったんだな、俺は。
こうしてキッツい訓練が始まった。
これから土日中心の投稿になると思いますがこれからもどうぞよろしくお願いします




