5:魔王
「魔王様、よろしかったのですか?あのものに『誓約』をかけずに野放しにするのはいささか危険ではありませんか?」
側近の男の言葉に対して魔王は否定の意思を示す。
「かまわない。お前は我が父や兄がなぜ召喚した勇者に裏切られたか分かるか?」
「人間の勇者にそそのかされたからだと伺っておりますが」
「兄はそこまで己の失態を隠そうとしていたのか…。父と兄は召喚した勇者に誓約をたてさせたうえ、その力を引き出した直後に人間領に送り込んだのだ。さらに運の悪いことに人間の勇者が規格外でな、かかっていた誓約すら解除されてしまった。裏切られたと感じた勇者はそのまま王城に攻め込んできた。この国の民の生活をみせていなかったのも悪かったんだろう。勇者は『魔族に正義があるわけがない』と私や兄の前で言ったよ。」
「しかし、だからといって裏切らないと決まったわけではないでしょう?」
「その点今回の神殿は考えていたのだろう。彼はもう、人間ではない。」
「ほう、神殿にも頭のまわる者がいましたか」
それに、と魔王は続けて言う。
「彼は今までの勇者とは違う色に見えたのさ」
“鑑色眼”それは、魔王の持つ力。他者の性格を、そして運命を色で見る力。
「彼の色は何色かわからない。話しているときは少し珍しいぐらいだったが、考えているときの彼は,
無色だった。」
「は?」
解からない、というように声をあげる側近に魔王は説明する。
「彼は、この世界にこれまでにない“何か”をもたらしてくれる。私達魔人は、もうそれに懸けるしかない…。せめて獣人とだけでも和解できれば…。」
「陛下…」
魔王はこの国を守るために手を尽くしたのだ。あとは勇者次第…




